1998年の法改正以降、外国為替証拠金取引という市場が新しく誕生しました。その後の発展は目覚しく、現在、預かり資産残高では商品先物市場を越えたものと思われます。ここでは、これまでの復習も兼ねて、外国為替市場の仕組みをおさらいしつつ、外国為替証拠金取引ついて解説します。
1 外国為替証拠金取引とは何か
まず、外国為替という言葉の由来ですが、為替というのは「かわし」が訛(なま)ったもので、「交わす」、つまり交換するという意味です。為替とは「現金の輸送をすることなしに、債権債務を決済すること」で、外国為替とは「現金の輸送をすることなしに、国境を越えて発生した債権債務を決済すること」ということになります。現状に即して、あるいは、ごく簡単に言えば、「外貨の取引(売買)」ということです。
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2 外国為替証拠金取引のポイント
ここで、外国為替証拠金取引のポイントについて触れます。レバレッジが一番のポイントかもしれませんが、それは後回しにして、外国為替全般のポイントを先に述べておきます。
実際には、業者選びから説明しないといけないのかもしれませんが、ここでは、割愛します。
◆ 売りから入ることができる
外貨預金と違い、売りから市場に参加できます。外貨預金は、外国の通貨を買うことからしか始めることはできませんが、外国為替相場では、買いからでも売りからでも入れます。外国為替とは、通貨の売買ですから、ドル売りといっても他の通貨、たとえば円を買ってドルを売るということから始めてもいいのです。あとでその円を売って、ドルを買って清算します。つまり、ドル円なら「円を売ってドルを買う」という取引と「ドルを売って円を買う」という取引のどちらでも選べます。「空売り」をイメージするよりもわかりやすいかもしれません。それもあって、外国為替証拠金取引では2005年7月から店頭取引でも、インターバンク(銀行間)市場と同じようにツー(2)ウェイ・クォート(ツーウェイ・プライスともいう)が採用されています。
また、外貨預金の期間はたいてい半年とか1年とかの定期ですが、外国為替の取引の期間は自由です。

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3 外国為替証拠金取引のスタンス
次に、取引するスタンスを考えてみましょう。
一般に、取引するには、自分のスタンスを明確にしておく必要があります。広い意味では、相場についての哲学、平たく言えば、自分がマーケットをどのようなものだと考えているかという問題も含まれます。たとえば、投機と投資を別のものと考えるのか、同じものと考えるのか。それは、個人によって異なります。あるいは、短期を狙うのか長期を狙うのか。逆張りか、順張りか。そういったことを考えておく必要があります。
というのも、それによって、やり方が変わるからです。
ここでは、具体的に、為替差益(相場変動)を取るのか、金利(金利差)を取るのか、ということを考えてみます。
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4 複利を考える
ここで、少し複利の話を考えておきたいと思います。
資産運用では、リスクが同じだとすれば、少しでも高い利回りを目指すべきだということになりますが、実は、複利の場合、それがさらに重要な問題になります。
トイチと呼ばれる闇の金融業者は、10日で1割の利息の支払いを要求するわけです。著名な作家が、年率365%にもなって恐ろしい……と書いていましたが、それは間違いです。トイチの怖いところは、「1割」にあるのではなく、「10日毎の複利」ということにあります。1年で365%ではなく約36倍ということになります。なんと約3500%の金利負担です。
自分が運用するときの複利は楽しい計算ですが、借金したときの複利計算は空恐ろしいものです。
アルバート・アインシュタインが、複利計算のことを「すべての時代を通じての最大の数学的発見」と呼んだというのも頷けます。
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2 外国為替相場を動かす要因は何だろう
◆ さまざまな要因
外国為替相場の変動要因についてはさまざまな考え方があります。いろいろな要因が指摘でき、その数は200とも300ともいわれています。
思いつくまま並べてみると、たとえば、ドルと円との関係では次のようなものが考えられます。
・日米(とくに米国)の成長率、物価、国際収支(経常収支)
・日米(とくに米国)の財政収支
・日米(とくに米国)の金融政策
・日米(とくに米国)の通貨政策(介入など)
・日米の株価、債券価格
・日米の金利差
・日米の貿易摩擦およびその交渉
・国際政治(G7などの国際会議)
・政治家や政府高官の発言
また、他の通貨の相場、たとえば、ユーロ・ドル相場に引きずられたりすることもあります。
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4 外国為替相場決定理論――国際収支説
◆ 国際収支説とは何か
外国為替相場が変動する要因が国際収支にあるというのが国際収支説です。
この説は古くからあって、アダム・スミスやジョン・スチュワート・ミルにまで遡ることができます。第一次世界大戦後のゴッシェンに代表される説です。
国際収支とは外国と一定期間の間に取り交わした経済にかかわるすべての取引を記録したものです。家計と同じように、出ていったお金が入ってくるお金より多ければ、国際収支は赤字となり、出ていったお金が少なければ、国際収支は黒字となります。
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6 金利、インフレと外国為替相場の関係は?
金利が上昇すれば金利商品購入の需要が増し、その国の通貨は上昇することになります。米国の金利が上昇した場合、米国の金利商品の魅力は増し、その分、米国へ資本が流れるということが起こります。資金運用という観点から見ても、資金を円で調達し、ドルに換えたほうが有利ということになります。
ただし、金利上昇でもう1つのシナリオが描けなくもありません。インフレが高じるとその国の通貨は下落して実質的な価値がなくなるわけですから、インフレが昂進する国の通貨は買えないということになります。
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7 外国為替相場決定理論――購買力平価説
購買力平価説は、1920年代に米国の経済学者カッセルが唱えた説です。その内容は、「外国為替レートは通貨が持つ購買力に依存する」というもので、外国為替相場決定理論の草分けです。
これを簡単にハンバーガーの値段を例にとって見てみましょう。考え方は第1章で述べたブランド物のサイフの例と同じです。少し古い例ですが、第二次世界大戦後、最大のドル安だったときの話です。95年4月には、ハンバーガー1個の値段が米国で2.32ドル、日本で391円でした。
Xドル=ハンバーガー1個=Y円ですから、
Xドル=Y円
1ドル=Y÷X=391÷2.32=169円
となります。
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10 投機と外国為替相場の関係は?
市場参加者たちの見方によって相場が変わってくるということが実際にあります(ジョージ・ソロスの反射理論は、この現象をセオリーと呼んだにすぎません)。
投機が相場を実際の経済に見合った水準から乖離させるということが起こり得るのです。
投機が価格を乱高下させているという発想は、投機家が上値で買う、高くなったけれどもさらに買う(買い上がる)と考えているからでしょう。
しかし、フリードマンが言うように本当の正しい動きに沿った動きをしない投機家は、いずれマーケットから淘汰されます。
より高く買って、より安く売るという技機家は市場に生き残ることはできないからです。賢明な投機家は価格変動の安定化に寄与していることになります。投機は市場を不安定にしないということです。そういう意味では一概に投機が悪いということはできません。
フリードマンと同様、ヒックスも投機の価格安定化機能を強調しています。
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11 外国為替相場決定理論――為替心理説
外国為替相場の変動の要因を説明する説の1つに為替心理説と呼ばれるものがあります。
為替心理説はフランスのアフタリヨンという学者が唱えた説で、ブレトン・ウッズ体制(固定相場)の下では、忘れられた存在でしたが、現在のような自由変動相場制、また、情報社会にあっては重要な説です。
外国為替相場は国際収支とか購買力平価では理解できないというものです。そう、人々の思惑が相場を動かすことがあるというのが為替心理説です。
たとえば、第一次世界大戦後に「ドイツが膨大な債務を負う」というニュースが流れただけで、非常なマルク安となり、それがドイツの物価を引き上げました(世界史の教科書で札束を積み木にして遊ぶ子どもたちや卵を買うのにボストンバッグや乳母車にお札を積んで運んでいる写真を見たことがあるかもしれません)。これは購買力平価説の逆の流れが起こったと考えられます。
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13 通貨政策について知っておこう
1971年のニクソン・ショック以来、カーターのドル防衛、プラザ合意などからもわかるように、大勢や中勢の相場動向は米国の意向によって決まっているかのようにみえるといっても過言ではありません。
その意味でも米国の通貨政策は相場を予測するうえで重要なポイントとなります。
さて、通貨政策に対する考え方(外国為替市場に対する立場)は、変動相場制支持か固定相場制支持か、また、自由市場を是とするか、介入を容認するかといったことで区分されます。現実には、変動相場制のもとでは、ある程度の介入は容認せざるを得ないという人が多いでしょう。その背景には「外国為替レートの変動は貿易収支の調整に役立つ」「通貨政策は有効」という考え方があるからです。
こうした考え方の標準となるのが、マサチューセッツ・アベニュー・モデルです。このモデルは狭義の計量モデルというだけでなく、1つの国際マクロ経済の考え方と言えます。
外国為替相場を読む鍵の1つはこのモデルにあるといえます。
マサチューセッツ・アベニュー・モデルという単語は知らなくても、多くの人がこのフレームワークを使っています。
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2 予測とは何か
予測にはいろいろな手法がありますが、大きくは、投影法、類推法、計量法に分けることができます。投影法は投影して考えていく方法で、類推法は類推して考えていく方法、計量法はこれらの合わせ技になります。以下、それぞれを簡単に説明します。
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3 相場予測とは何だろう
◆ 相場変動を読むとは?
予想の目的は人によって違います。有名な人の発言であっても鵜呑みにしてはいけません。
昔、ドルが高かったころ、ある研究所が1ドル=120円になった場合のシミュレーションを出しました。その報告書は、1ドル=120円になったら日本経済はダメになってしまうというもので、だから1ドル=120円という円高はあり得ないと結論づけました。たまたま120円という水準を提示しただけで、円高予測をしたわけではありません。その研究所が円高を当てたとするマスコミは不勉強だと思います。
では、いったい何を信じればよいのでしょうか。発言者の真意を考えることです。彼はポジションを持っているために引きずられているのかもしれないからです。はずれかかっているのを承知しながら、立場上、同じことを鸚鵡返しにいっているにすぎないのかもしれません。
相場は、社会現象が対象です。たとえば、自然科学は試験管のなかに実験対象があって観察者はそれを外から眺めていますが、社会科学は観察者自身も試験管のなかに入ってしまいます。ポジションを待ちながら問題を考えていきますから、自らの立場の影響が予測に出てしまうのです。デルフォイ法がコントラリー・オピニオンとして使用できるのもそのためです。
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4 マーケット予測をするときの注意点
予測し取引をしていくうえで、意外に大切なのがマーケットと自分との距離感です。それがマーケット予測の際にも、取引の際にも大きく影響するからです。
◆ 思考体系(マーケットの認識)
自分がマーケットに対してどのような認識をしているのかを自覚しているでしょうか。マーケットはファンダメンタルズで決まる、米国の思惑で決まる、あるいはユダヤの思惑で決まる、などいろいろな考え方がありますが、自分がどのような考え方で予測しているかを明確に意識することは重要です。
◆ 目的の明確化、スタイルの確立
「どうして、この方針をとったのか」というのが途中で変わってしまうことがあります。自分はテクニカル・アナリストとしてテクニカル分析で買いポジションをとったのに、相場が下がり始めると突然ファンダメンタルズはまだ上がるはずだなど、それまでと違う発想をして自分をごまかしてしまう人がいます。こうしたことが起こるのは、まだマーケットを予測するスタンスが自分でもよくわかっていないからです。自分のスタイルをよく理解していないためにこういうことが起きてくるのです。
売買するときは、自分が何を思ってそれを売買するのかを記録につけておくことです。
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5 高橋亀吉の相場哲学を学ぶ
表は高橋亀吉の『私の実践経済学』(東洋経済新報社)などからの要約と私なりの簡単な解説です。彼のフィロソフィー(相場哲学)から学ぶことはたくさんあります。予測する際に参考となると思いますので、いくつかを紹介しておきます。
◆ 経済理論は変化する
時代が違えば経済理論は異なってきますが、経済理論は変化すると思っていない人がいます。「過去のケースからすれば今回も……」と考えすぎるのもよくありません。
環境の変化に応じて柔軟な考え方をする必要があります。
◆ 理論は本ではなく現実から学ぶ
高橋はアダム・スミスになったつもりで観察し、考えました。前述のように、私も当事者の立場で考えることにしています。
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