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2007年07月 アーカイブ

2007年07月11日

第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-1

 1998年の法改正以降、外国為替証拠金取引という市場が新しく誕生しました。その後の発展は目覚しく、現在、預かり資産残高では商品先物市場を越えたものと思われます。ここでは、これまでの復習も兼ねて、外国為替市場の仕組みをおさらいしつつ、外国為替証拠金取引ついて解説します。

1 外国為替証拠金取引とは何か

 まず、外国為替という言葉の由来ですが、為替というのは「かわし」が訛(なま)ったもので、「交わす」、つまり交換するという意味です。為替とは「現金の輸送をすることなしに、債権債務を決済すること」で、外国為替とは「現金の輸送をすることなしに、国境を越えて発生した債権債務を決済すること」ということになります。現状に即して、あるいは、ごく簡単に言えば、「外貨の取引(売買)」ということです。

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第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-2

2 外国為替証拠金取引のポイント

 ここで、外国為替証拠金取引のポイントについて触れます。レバレッジが一番のポイントかもしれませんが、それは後回しにして、外国為替全般のポイントを先に述べておきます。
 実際には、業者選びから説明しないといけないのかもしれませんが、ここでは、割愛します。

◆ 売りから入ることができる
 外貨預金と違い、売りから市場に参加できます。外貨預金は、外国の通貨を買うことからしか始めることはできませんが、外国為替相場では、買いからでも売りからでも入れます。外国為替とは、通貨の売買ですから、ドル売りといっても他の通貨、たとえば円を買ってドルを売るということから始めてもいいのです。あとでその円を売って、ドルを買って清算します。つまり、ドル円なら「円を売ってドルを買う」という取引と「ドルを売って円を買う」という取引のどちらでも選べます。「空売り」をイメージするよりもわかりやすいかもしれません。それもあって、外国為替証拠金取引では2005年7月から店頭取引でも、インターバンク(銀行間)市場と同じようにツー(2)ウェイ・クォート(ツーウェイ・プライスともいう)が採用されています。
 また、外貨預金の期間はたいてい半年とか1年とかの定期ですが、外国為替の取引の期間は自由です。

外国為替賞証拠金取引の損益

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第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-3

3 外国為替証拠金取引のスタンス

 次に、取引するスタンスを考えてみましょう。
 一般に、取引するには、自分のスタンスを明確にしておく必要があります。広い意味では、相場についての哲学、平たく言えば、自分がマーケットをどのようなものだと考えているかという問題も含まれます。たとえば、投機と投資を別のものと考えるのか、同じものと考えるのか。それは、個人によって異なります。あるいは、短期を狙うのか長期を狙うのか。逆張りか、順張りか。そういったことを考えておく必要があります。
 というのも、それによって、やり方が変わるからです。
 ここでは、具体的に、為替差益(相場変動)を取るのか、金利(金利差)を取るのか、ということを考えてみます。

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第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-4

4 複利を考える

 ここで、少し複利の話を考えておきたいと思います。
 資産運用では、リスクが同じだとすれば、少しでも高い利回りを目指すべきだということになりますが、実は、複利の場合、それがさらに重要な問題になります。
 トイチと呼ばれる闇の金融業者は、10日で1割の利息の支払いを要求するわけです。著名な作家が、年率365%にもなって恐ろしい……と書いていましたが、それは間違いです。トイチの怖いところは、「1割」にあるのではなく、「10日毎の複利」ということにあります。1年で365%ではなく約36倍ということになります。なんと約3500%の金利負担です。
 自分が運用するときの複利は楽しい計算ですが、借金したときの複利計算は空恐ろしいものです。
 アルバート・アインシュタインが、複利計算のことを「すべての時代を通じての最大の数学的発見」と呼んだというのも頷けます。

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第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-5

5 実際の運用

 現実問題としてはどうすればいいのでしょう。
 お話としては高金利の通貨を買って複利で運用することの面白さはわかってもらえたことと思います。しかし、一瞬ですべてを失うということでもありますから、机上の話とし感じる人も多いようです。
 もう少し堅実に運用したいという人におすすめしたい方法があります。私が実践している方法でもあります。
 たとえば、20万円なり、50万円なりを外国為替取引の証拠金として取引をはじめ(この金額は人によって違います)、同額の儲けが出たら(持ち金が2倍になったら)、当初の投入金額を払い戻してしまうという方法です(もちろん、2倍にならなくても、投下した金額を回収すればいいのですが)。つまり、自分の投下資金を早々に回収してしまうのです。その後、万一、証拠金をすべて失うような状況になったとしても、自分の資産にダメージはなかったと考えれば口惜しくないのではないでしょうか。

第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-6

6 金利の逆転

 金利差が縮まって、金利が逆転したらどうなるのでしょうか。たとえば、円金利がドル金利よりも高くなったとしましょう。高金利の通貨を買って低金利の通貨を売るという戦略を変えないというのであれば、ドル売り円買いのポジションをとってロールオーバーしていくということになります。
 過去10年間の円とドルの金利差は、平均で約3.5%ほどです。今よりも金利差は小さいけれども、それでも十分な金利差でしょう。90年代前半に一時期、逆転していたことがありますが、当分はなさそうです。

第5章 外国為替証拠金取引の仕組みと取引方法-7

7 ドル円レートの長期的な動き

 歴史的な視点も大事ですので、ここで、大きな流れだけ話しておくことにしましょう。戦後、360円だったドル円レートは1971年にニクソン・ショックがあり、1978年に180円ほどにまで下落しました。そこでカーター大統領のドル防衛策が発表されて270円の水準まで戻りました。1985年にはプラザ合意があり、そのときは240円くらいだったのですが、1995年に80円まで下落します。これが戦後のドルの最安値です。正確には79円75銭でした。その後、ほぼ円安に推移していることになります。
 また、ドル円相場にもサイクルというものがあります。いろいろなサイクルがあるのですが、5年ほどで一巡するものもあります。たとえば、ドルがいつ底をつけたかを調べていくと、1995年の次は2000年、その次は2005年でした。次は2010年ということかもしれません。

2007年07月19日

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-1

 外国為替相場で変動が起きるのには、いろいろな理由があります。外部要因ばかりでなく、参加者のポジションや思惑など、外国為替相場にはさまざまな要因が影響を与えます。ここでは、その要因の代表的なものについて概説します。

1 為替レートはなぜ動くのか

 これは外国為替に限りませんが、何か品物があって、それを売りたい人と買いたい人がいるとします。買いたい人が多くてたくさんの商品が必要なときに、その商品が不足していると商品の値段は上がっていくことになります。
 外国為替市場も基本的には同じです。政府があるレートを決めてその水準に固定するということをしない限りは、通貨の需給関係で動くことになります。
 ただ、政府が固定相場を敷いている場合でも、実は同じです。それは政府が資本の動き制限し、需給の不均衡を民間ではなく、政府の資金でまかなっているにすぎません。
 通貨の交換レートは、基本的には需要と供給のバランスで決まります。
 たとえば、日本の輸出額が増えて経常収支の黒字が大きくなると、円買いドル売りの通貨の交換が行われます。円を買う人が多くなるのですから、円高になります。

外国為替相場は需給関係で決まる

 逆に、輸入が増えた場合は、円を外貨に交換する人が増え、円売りドル買いが多くなり、円安になります。
 もちろん、外国為替相場が変動する理由は他にもあり、輸出入だけで決まるものではありません。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-2

2 外国為替相場を動かす要因は何だろう

◆ さまざまな要因
 外国為替相場の変動要因についてはさまざまな考え方があります。いろいろな要因が指摘でき、その数は200とも300ともいわれています。
 思いつくまま並べてみると、たとえば、ドルと円との関係では次のようなものが考えられます。
・日米(とくに米国)の成長率、物価、国際収支(経常収支)
・日米(とくに米国)の財政収支
・日米(とくに米国)の金融政策
・日米(とくに米国)の通貨政策(介入など)
・日米の株価、債券価格
・日米の金利差
・日米の貿易摩擦およびその交渉
・国際政治(G7などの国際会議)
・政治家や政府高官の発言
 また、他の通貨の相場、たとえば、ユーロ・ドル相場に引きずられたりすることもあります。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-3

3 ファンダメンタルズと外国為替相場の関係は?

 外国為替相場の変動は、その他の市場と比較すると読みがかなり難しいといわれます。その理由は外国為替相場が国内の経済の問題ばかりでなく、国際経済や政治動向にも左右されるからです。
 変動の要因は非常にたくさんあるといってもよいのですが、種々の相場のなかで最もファンダメンタルズから遠い、あるいはファンダメンタルズそのものの把握が困難だというのが外国為替相場だろうと思います。
 外国為替市場でのファンダメンタルズは、実のところ、あまり定義のはっきりしない言葉です。経済の基礎的条件といっても具体的には何のことかわかりません。景気や景況感といっても明確なものではないのです。
 ファンダメンタルズとしてさまざまなものをあげることはできますが、一般的にはファンダメンタルズとは経済成長率、物価、国際収支、失業率の4つの経済指標の全体といってよいと思います。文字通り、本当に基本的なものと考えることが可能です。

ファンダメンタルズとは

 このうち、国際収支(経常収支)に注目したのが国際収支説であり、物価に注目したのが購買力平価説です。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-4

4 外国為替相場決定理論――国際収支説

◆ 国際収支説とは何か
 外国為替相場が変動する要因が国際収支にあるというのが国際収支説です。
 この説は古くからあって、アダム・スミスやジョン・スチュワート・ミルにまで遡ることができます。第一次世界大戦後のゴッシェンに代表される説です。
 国際収支とは外国と一定期間の間に取り交わした経済にかかわるすべての取引を記録したものです。家計と同じように、出ていったお金が入ってくるお金より多ければ、国際収支は赤字となり、出ていったお金が少なければ、国際収支は黒字となります。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-5

5 景気と外国為替相場の関係は?

 ここでは一般的にいわれる経済社会メカニズムと外国為替相場との関係について述べます。ただ、ここで述べることは絶対ということではありません。市場では、材料の見方が変わるということもあります。
 まず、景気と外国為替相場の関係です。
 景気が拡大するとその国の通貨は上昇します。国際競争力が増して貿易収支の黒字が拡大し、資本収支でも直接投資が活発となるからです。金利も上昇しやすく投資面での魅力も増すということが考えられます。

 これを2つの国、たとえば日米間で考えてみると、日本の景気が変わらずに米国の景気がよくなれば、景気拡大による金利の上昇から米国の金利商品購入の需要が増大し、日本からの資本移動が増えます。つまり、ドル買い円売りです。
 逆に、日本の景気がよくなって米国の景気がそのままであれば、ドル売り円買いにつながりやすいということになります。
 また、外国為替相場は相対的なものですから、日本の景気が悪くなって米国の景気がそのまま不変であれば、日本の景気が変わらずに米国の景気がよくなる場合と同じ現象(ドル買い円売り)が起こりやすく、日本の景気が変わらずに米国の景気が悪くなれば、日本の景気がよくなって米国の景気がそのままという場合と同じ現象(ドル売り円買い)が起こりやすいということになります。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-6

6 金利、インフレと外国為替相場の関係は?

 金利が上昇すれば金利商品購入の需要が増し、その国の通貨は上昇することになります。米国の金利が上昇した場合、米国の金利商品の魅力は増し、その分、米国へ資本が流れるということが起こります。資金運用という観点から見ても、資金を円で調達し、ドルに換えたほうが有利ということになります。
 ただし、金利上昇でもう1つのシナリオが描けなくもありません。インフレが高じるとその国の通貨は下落して実質的な価値がなくなるわけですから、インフレが昂進する国の通貨は買えないということになります。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-7

7 外国為替相場決定理論――購買力平価説

 購買力平価説は、1920年代に米国の経済学者カッセルが唱えた説です。その内容は、「外国為替レートは通貨が持つ購買力に依存する」というもので、外国為替相場決定理論の草分けです。
 これを簡単にハンバーガーの値段を例にとって見てみましょう。考え方は第1章で述べたブランド物のサイフの例と同じです。少し古い例ですが、第二次世界大戦後、最大のドル安だったときの話です。95年4月には、ハンバーガー1個の値段が米国で2.32ドル、日本で391円でした。

 Xドル=ハンバーガー1個=Y円ですから、
 Xドル=Y円
 1ドル=Y÷X=391÷2.32=169円

 となります。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-8

8 外国為替相場決定理論――アセット・アプローチ

 外国為替市場では、貿易取引よりも資本取引のウエイトが高まっています。金融資産の蓄積が進んだことから、フロー(ある期間の資産の量のこと。バケツに流れ込む水の量にたとえられます)の経済活動とともにストック(ある時点の資産の量のこと。バケツのなかの水にたとえられます)の変化が重要になったと考えることができるのです。
 簡単にいえば、比較的少額の資本の流出入よりも、蓄積された金額の利子の変化のほうが外国為替相場への影響が大きいと考えるわけです。

 そこで、フローではなく、ストックに注目しようというのがアセット・アプローチ(ポートフォリオ・アプローチ)です。
 アセット・アプローチとは、相場がストックとしての金融資産の需給によって決定され、需給が生じるのは資産の将来価格の予想による、というものです。
 金融資産(ストック)の変化がポイントになるわけですが、金利の変化と外国為替変動予測が相場に影響すると考えます。要するに、金利差説と考えてもらってよいのですが、金利要因による資金の動きは循環的でもあるということも忘れてはなりません。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-9

9 政治情勢と外国為替相場の関係は?

 その昔、経済学は政治経済学と呼ばれていました。一国の経済はその国の政治を、国際経済は国際政治を抜きにしては語ることができません。したがって、政治情勢によって経済は非常に大きな影響を受けることになります。
 たとえば、政治不安に陥った国は経済的な混乱が予想されるということで、その国に入っていた資本は国外へと向かいます。逆に、経済の状況が悪いと政治不安が起こることにもなります。1997年に起こったアジア通貨危機でも、東アジア諸国でこの例が起こっています。
 制度変更なども相場に影響を与えます。

◆ 有事の際のドル買い
 かつて東西の冷戦構造が存在していたころ、外国為替ディーラーの間では「有事の際のドル買い(有事に強いドル)」というセオリーがありました。軍事的緊張がドル買いを生むという発想です。それが起こることがわかっているので、旧ソ連は自分たちがアフガンに侵攻する前にドルを買い込んで儲け、それで軍事費をまかなったという話もあります。

 しかし、1991年1月の湾岸戦争の時はどうだったでしょうか。東西の冷戦構造が終焉を迎えつつあり(ソビエト連邦の崩壊は91年12月のことで、この時期はすでにソ連は凋落傾向にありました)湾岸戦争の時は世界大戦につながらないような局地戦だったため、有事のドル買いにはなりませんでした。そもそも米ソの冷戦がなくなれば成立しないセオリーだったのです。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-10

10 投機と外国為替相場の関係は?

 市場参加者たちの見方によって相場が変わってくるということが実際にあります(ジョージ・ソロスの反射理論は、この現象をセオリーと呼んだにすぎません)。
 投機が相場を実際の経済に見合った水準から乖離させるということが起こり得るのです。
 投機が価格を乱高下させているという発想は、投機家が上値で買う、高くなったけれどもさらに買う(買い上がる)と考えているからでしょう。
 しかし、フリードマンが言うように本当の正しい動きに沿った動きをしない投機家は、いずれマーケットから淘汰されます。

より高く買って、より安く売るという技機家は市場に生き残ることはできないからです。賢明な投機家は価格変動の安定化に寄与していることになります。投機は市場を不安定にしないということです。そういう意味では一概に投機が悪いということはできません。
 フリードマンと同様、ヒックスも投機の価格安定化機能を強調しています。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-11

11 外国為替相場決定理論――為替心理説

 外国為替相場の変動の要因を説明する説の1つに為替心理説と呼ばれるものがあります。
 為替心理説はフランスのアフタリヨンという学者が唱えた説で、ブレトン・ウッズ体制(固定相場)の下では、忘れられた存在でしたが、現在のような自由変動相場制、また、情報社会にあっては重要な説です。
 外国為替相場は国際収支とか購買力平価では理解できないというものです。そう、人々の思惑が相場を動かすことがあるというのが為替心理説です。
 たとえば、第一次世界大戦後に「ドイツが膨大な債務を負う」というニュースが流れただけで、非常なマルク安となり、それがドイツの物価を引き上げました(世界史の教科書で札束を積み木にして遊ぶ子どもたちや卵を買うのにボストンバッグや乳母車にお札を積んで運んでいる写真を見たことがあるかもしれません)。これは購買力平価説の逆の流れが起こったと考えられます。

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第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-12

12 ビッグプレーヤーの手口・噂など

 たとえば、「昨日、米系ヘッジ・ファンドの総帥ジョージ・ソロスがドル売り円買いをしていた」などの噂がマーケットに出ることがあります。外国為替市場はテレフォン・マーケットですから、風説が伝わっていく様はまるで伝言ゲームのようです。
 しかし、一般の市場参加者が他のビッグプレーヤーの動向を知ることなど、果たして可能なのでしょうか。
 噂を伝えてくれた外国為替ディーラーに感謝しつつ、私は次のように考えます。
 「私だったら自分のポジションを他人に知られるような下手な手は打たない。であれば、私よりも賢いに違いないソロスが、自分の本当のポジションを他人に知られるような動きをするはずもない」と。
 ソロスの立場になって考えるのです。
 伝説の相場師W・D・ギャンは70年ほど前にこういっています。
 「相場操縦者が誠実で自己の利益のために働いているとするなら、自らが株を買い集めていると言い触らすことなど期待できない」「ポーカーをしているとき、こちらが手の内を見せないのに相手が手の内をさらけ出してくれることを期待できるだろうか」(『W・D・ギャン著作集』より)
 実際、ソロスは口の堅い銀行で望むポジションをとりつつ、口の軽い銀行で反対のポジションを小口でとるようです。ポジションが大きくなると、そういう動き方も必要になるのです。
 また、ソロスの動向が正しく伝わってきたとします。しかし、その情報に価値があると思う人は相場に向いていないかもしれません。
 私の経験からいって、大玉だから相場が動くというものではありません。逆に、小玉でも相場に乗ることはできるのです。
 世の中には、まるで著名な投資家と友人であるかのように書き、喋る人がいます。糊口を凌ぐためとはいえ、可哀相なものです。

第6章 外国為替相場はなぜ変動するのか-13

13 通貨政策について知っておこう

 1971年のニクソン・ショック以来、カーターのドル防衛、プラザ合意などからもわかるように、大勢や中勢の相場動向は米国の意向によって決まっているかのようにみえるといっても過言ではありません。
 その意味でも米国の通貨政策は相場を予測するうえで重要なポイントとなります。
 さて、通貨政策に対する考え方(外国為替市場に対する立場)は、変動相場制支持か固定相場制支持か、また、自由市場を是とするか、介入を容認するかといったことで区分されます。現実には、変動相場制のもとでは、ある程度の介入は容認せざるを得ないという人が多いでしょう。その背景には「外国為替レートの変動は貿易収支の調整に役立つ」「通貨政策は有効」という考え方があるからです。
 こうした考え方の標準となるのが、マサチューセッツ・アベニュー・モデルです。このモデルは狭義の計量モデルというだけでなく、1つの国際マクロ経済の考え方と言えます。
 外国為替相場を読む鍵の1つはこのモデルにあるといえます。
 マサチューセッツ・アベニュー・モデルという単語は知らなくても、多くの人がこのフレームワークを使っています。

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2007年07月26日

第7章 外国為替相場を予測してみよう-1

 外国為替ディーラーやマーケットエコノミストは外国為替相場をどのように予測しているのでしょうか。ここでは、相場を予測するにはどのようにすればよいのか、実践に即して説明します。

1 実践・マーケット予測

 ここでは、教科書的な話にとどまらず「実際にどのように予測しているのか」ということを述べたいと思います。
 経済学は社会科学ですが、相場はさらに社会科学的です。どういう意味かといいますと、自然科学のように割り切れないために、「本当にそうか」ということが頻繁に起こるということです。
 たとえば、米国が金利を上げた場合、金利が上がるからドルを買うという意見も出れば、債券が売られるかもしれないからドルを売るという意見も出てきます。このときにどちらをメイン・シナリオと考えるか、ということがポイントになってくるのです。
 「風が吹けば桶屋が儲かる」ではありませんが、シナリオはさまざまに描けるわけです。

◆ よい予測をするには?
 「よい予測をするにはどうすればよいのですか」という質問をよく受けます。私は2つの答えを用意しています。
 1つは「よい予測をしようと思うこと」です。いい加減な気持ちで予測が当たるほど相場は甘くありません。もう1つは「かわいい人であること(愛嬌があること)」です。別に、媚を売れと言っているのではありません。ただ、何か価値のある情報を伝えようとするとき、生意気な人間に対してはその気にならないからです。かわいくない人は情報収集の点で劣るということです。

第7章 外国為替相場を予測してみよう-2

2 予測とは何か

 予測にはいろいろな手法がありますが、大きくは、投影法、類推法、計量法に分けることができます。投影法は投影して考えていく方法で、類推法は類推して考えていく方法、計量法はこれらの合わせ技になります。以下、それぞれを簡単に説明します。

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第7章 外国為替相場を予測してみよう-3

3 相場予測とは何だろう

◆ 相場変動を読むとは?
 予想の目的は人によって違います。有名な人の発言であっても鵜呑みにしてはいけません。
 昔、ドルが高かったころ、ある研究所が1ドル=120円になった場合のシミュレーションを出しました。その報告書は、1ドル=120円になったら日本経済はダメになってしまうというもので、だから1ドル=120円という円高はあり得ないと結論づけました。たまたま120円という水準を提示しただけで、円高予測をしたわけではありません。その研究所が円高を当てたとするマスコミは不勉強だと思います。
 では、いったい何を信じればよいのでしょうか。発言者の真意を考えることです。彼はポジションを持っているために引きずられているのかもしれないからです。はずれかかっているのを承知しながら、立場上、同じことを鸚鵡返しにいっているにすぎないのかもしれません。
 相場は、社会現象が対象です。たとえば、自然科学は試験管のなかに実験対象があって観察者はそれを外から眺めていますが、社会科学は観察者自身も試験管のなかに入ってしまいます。ポジションを待ちながら問題を考えていきますから、自らの立場の影響が予測に出てしまうのです。デルフォイ法がコントラリー・オピニオンとして使用できるのもそのためです。

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第7章 外国為替相場を予測してみよう-4

4 マーケット予測をするときの注意点

 予測し取引をしていくうえで、意外に大切なのがマーケットと自分との距離感です。それがマーケット予測の際にも、取引の際にも大きく影響するからです。

◆ 思考体系(マーケットの認識)
 自分がマーケットに対してどのような認識をしているのかを自覚しているでしょうか。マーケットはファンダメンタルズで決まる、米国の思惑で決まる、あるいはユダヤの思惑で決まる、などいろいろな考え方がありますが、自分がどのような考え方で予測しているかを明確に意識することは重要です。

◆ 目的の明確化、スタイルの確立
 「どうして、この方針をとったのか」というのが途中で変わってしまうことがあります。自分はテクニカル・アナリストとしてテクニカル分析で買いポジションをとったのに、相場が下がり始めると突然ファンダメンタルズはまだ上がるはずだなど、それまでと違う発想をして自分をごまかしてしまう人がいます。こうしたことが起こるのは、まだマーケットを予測するスタンスが自分でもよくわかっていないからです。自分のスタイルをよく理解していないためにこういうことが起きてくるのです。
 売買するときは、自分が何を思ってそれを売買するのかを記録につけておくことです。

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第7章 外国為替相場を予測してみよう-5

5 高橋亀吉の相場哲学を学ぶ

 表は高橋亀吉の『私の実践経済学』(東洋経済新報社)などからの要約と私なりの簡単な解説です。彼のフィロソフィー(相場哲学)から学ぶことはたくさんあります。予測する際に参考となると思いますので、いくつかを紹介しておきます。

◆ 経済理論は変化する
 時代が違えば経済理論は異なってきますが、経済理論は変化すると思っていない人がいます。「過去のケースからすれば今回も……」と考えすぎるのもよくありません。
 環境の変化に応じて柔軟な考え方をする必要があります。

◆ 理論は本ではなく現実から学ぶ
 高橋はアダム・スミスになったつもりで観察し、考えました。前述のように、私も当事者の立場で考えることにしています。

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第7章 外国為替相場を予測してみよう-6

6 マーフィーの法則とは何だろう

◆ マーフィーの法則
 本当かもしれないし嘘かもしれないという法則もどきがマーフィーの法則です。
 たとえば、「パンにジャムを塗って床に落とすと高級絨毯ならジャムがくっついてしまうが、安価な絨毯ならくっつくことはない」というようなものだといわれますが、もともとの意味は少し違うようです。
 マーフィーの法則は、物事の不条理などに関する一連の警句、経験から生まれた種々のユーモラスな知恵です。井上ひさし氏の本では『諺よりはやや合理的であるが、科学上の法則よりはずっと不合理な法則もどき。仕事の進め方や時間管理や組織づくりについての、ユーモラスな警句。科学者や技術者や実務家の信じているらしい、あまりあてにならぬ法則』と紹介されています。
 外国為替相場の理論や仮説、材料の解釈もマーフィーの法則に近いと思います。
 たとえば、かつて「有事の際のドル買い」ということがよく言われました。理論的に正しいかどうかは別にして、軍事的紛争があったらドルを買えばよいと皆が思っていました。これもマーフィーの法則でしょう。
 これらは時代とともに、見方が変わってくることもあります。たとえば、「有事の際のドル買い」も、ソ連の崩壊後は言われることはなくなりました。
 「財政出動して景気を刺激するという国の通貨は『買い』か『売り』か」という問いに対する答えは、人によって異なると思います。おそらくその国の景気はよくなるので「買い」だと思う人が多いでしょう。
 米国のGDP成長率が増えた場合、私たちはドル買いを発想します。昔の本を見ますと、答えはドル売りになっています。これは本が間違っているのではなく、当時のセオリーがそうであったことを示しています。

 現在では、日本が財政出動を積極的に行った場合、円が買われると考える人が多いと思いますが、昔の理論ではそうではなかったというわけです。
 なぜなら、財政を出動しないと景気がよくならないような国は、ゆくゆくはインフレが起こり、その国の通貨は「売り」だと考えられていたわけです。インフレになる国の通貨を買うのはおかしいのです。現在と答えがまったく違うのは20~30年前に皆の認識が変わったためなのです。それまでは「売り」だったセオリーが「買い」に変わったわけです。これは端的な例ですが、どちらが正解かは別として、流行の考え方についていくことも大事だと思います。

第7章 外国為替相場を予測してみよう-7

7 思考経済の法則とは?

 思考経済の法則とは、ある現象から起こり得るシナリオが2つ考えられるとき、人々は単純なほうを選んでしまうというものです。
 たとえば、ある国の金利が上がるということは、その国の債券価格が下がるということになります。インフレも考慮しなくてはなりません。しかし、マーケットでは、インカム・ゲインが増える、と単純に考えるのが一般的です。
 イタリアの社会学者パレートの8割2割の法則というのがあります。たとえば、ある事柄を知る目的で、10冊の本のなかから良書といわれている2冊を読めばその事柄の8割を理解できる、あるいは、会社の2割の人が8割の利益を稼いでいる、といった状態を示す言葉です。
 市場には、経済指標、噂、軍事的紛争、当局者の発言、その他いろいろな情報が飛び込んできますから瞬間的に判断しなければなりません。瞬時の判断には5つ程度の要因で十分です。要因を細かく探せば200個以上見つかるでしょうが、逆に判断がし難くなるでしょう。
 ということは、私たちは瞬間的に判断することで暗黙のうちに思考経済の法則に従っていることになります。

第7章 外国為替相場を予測してみよう-8

8 材料はファクター・ローテーション

 これまで、相場変動の読み方について説明してきましたが、どれも一長一短があります。それでは、私たちは何を信じたらよいのでしょうか。
 私はファクター・ローテーションという考え方をします。
 株式相場の言葉にセクター・ローテーションというのがあります。金融セクターの次は○○のセクターが買われる、ケミカルの次は○○セクターが上がるというのがセクター・ローテーションで、市場参加者が買い推奨のセクターを順番に選んでいくというものです。
 材料にも流行りすたりがあるのです。私はそれを、セクター・ローテーションをもじって、ファクター・ローテーションと呼んでいます。
 ある時は経常収支、ある時は金利差、ある時は当局の発言と、歌謡曲のヒット・チャートのように外国為替ディーラーや業界の人たちはそのときどきのベスト1(最も大事な要因)を選択しているようです。おそらく市場参加者はマーケット材料をファクター・ローテーティングして、たとえば、いまは経常収支が注目される時代なのか金利で動く時代なのかといったことを見極めているのだと思います。皆と違うものを選んだ人は負けてしまいます。

 ファクター・ローテーションでも、ひとりよがりになってしまうと、チェリー・ピッキング(いいとこ取り)となり、相場を見間違うもとになってしまいます。
 繰り返しになりますが、大事なポイントは「他人が他人の予測をどう予測すると思うか」です。「こう考えるべきだ」「私はこう思います」というのはさほど大事ではなく、1つの判断にすぎません。
 自分の意見が大事なのではなく、今後の相場動向を隣人がどう思っているか、また、自分がどう思っていると隣人が考えているかを読むことです。

第7章 外国為替相場を予測してみよう-9

9 テクニカル分析とは何か

 市場は外部要因ばかりでなく、内部要因でも動きます。これは、相場変動の理論や板説からは予測できないものです。
 したがって、相場変動を観察するなど、ファンダメンタルズとは別の方法で市場にアプローチすることも必要となってきます。
 特に、外国為替相場がファンダメンタルズから遠い分(他の相場と比べると、変動要因が入り組んでいて複雑なため、結局ファンダメンタル分析の有効性は相対的に低いと思われます)、そういった視点は不可欠です。
 以上が、外国為替相場でテクニカル分析が必要となる背景です。
 紙幅の関係もあり詳細は述べませんが、テクニカル分析とは、一般に過去の価格から現状を分析し、将来を予測することです。
 テクニカル分析は、デンジャー・ポイントが把握でき、心理的にも安定することができる、汎用性、普遍性が高いなどの特徴があります。相場を総合判断するのに欠かせない手法だと思います。

 テクニカル分析は、価格の分析とそれ以外の指標の分析に分けられ、価格の分析はさらにトレンド系とオシレーター系に分けられます。
 また、相場変動の周期性を解析するタイム・サイクルなどもテクニカル分析の技法の1つです。
 テクニカル分析は、ファンダメンタル分析と対立すると思われる人も多いようですが、私はそうは考えません。
 『宗論』という狂言があります。2人の僧が宗旨の違いを言い争うものですが、結局、目指すものは同じと理解しあえるというものです。テクニカル分析とファンダメンタル分析もそういう関係かもしれません。

第7章 外国為替相場を予測してみよう-10

10 実際に相場を予測してみる

 簡単におさらいをしておきましょう。
 「変化」か「変態」かという話を述べましたが、シグナルが本物かどうかをトレンドとサイクルを組み合わせて考えてみます。定量よりも定性的な判断を心がけます。
 発想の転換も大事です。情報を集めようとただ聞いているよりもブレーン・ストーミング形式で誰かと対話をしていくほうが自分の考えがまとまってくることがあります。
 また、いくつかのシナリオをつき詰めて考えていく必要があります。「原油が急騰したら外国為替相場は……」などのアクシデントもメイン・シナリオと併せて想定しなければなりません。

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