中国の全国政協委員(日本の国会議員に相当。ただし、全人代と違い、政協会は決定権を持っていない。提案だけを行う)で、華東師範大学商学院院長の黃澤民先生が、5年ぶりに、6月から7月にかけて訪日されました。セミナー、大学でのレクチャー、日本経済新聞、NHK等々、マスコミのインタビューと、精力的に活動され、その合間に、立正大学経済学部教授の林康史先生、また、弊社社長・潘福平とも座談会を行いました。

林康史先生は、今年から華東師範大学商学院の客員教授もされています。また、潘は、来日する前は、華東師範大学商学院で教鞭を取っていましたので、黃澤民先生は、潘にとって、年長の同僚ということになります。現在も、親交があります。

ちなみに、この対談は、来日時の黃先生の発言、また、インタビューで構成しています。

<ゲスト>
華東師範大学商学院院長 黃 澤民氏
立正大学経済学部教授 林康史氏

<聞き手>
㈱くにやす・FX社長 潘福平

Ⅰ.人民元為替制度の現状およびレート水準

      ~ 人民元為替制度の回顧~

 人民元の制度の今後の展望についてお伺いしたいと思いますが、その前に、歴史的展開についてお伺いしたいと思います。

 1994年1月に、いろいろなレートが存在する、いわゆる二重相場制度から、①単一レートで、②フロートさせる制度に移行します。

中国人民銀行は、為替制度に 関しては、「市 場の需給関係に基づいた管理フロート制」と表現しています。

人民元レートの一本化に関しては、中央銀行の規定により定められた行政レートと外国為替調整市場のレートとを統合し、新しいレートを1ドル=8.70元としたわけです。全国銀行間のマーケットの役割を果たす中国外国為替取引センターを設立します。

この制度は、1997年のアジア通貨危機まで続くのですが、この間に、元レートは対ドルで、8.70元から8.4元に少し元高となります。通貨危機後、8.2元で固定されるわけです。

 その後、中国の貿易収支黒字を是正すべく、日米等から、元の切り上げと、自由変動相場制度の採用という要求が高まってくるわけですね。

 そうです。2005年7月21日、中国人民銀行は人民元の対米ドル交換レートを2%切り上げるとともに、単一通貨米ドルとのリンクを撤廃し通貨バスケット制度を導入すると発表しました。

 その切り上げ幅が市場予測を下回っていたため、人民元のさらなる切り上げ期待が市場に根強く残ったわけでした。

 2005年の改革で中国が導入したのは、Williamsonの「BBC」型為替システムといわれるものでした。

 「BBC」ですか?

 はい。為替レートは非公開の範囲内で変動させ、政策区域を乖離した場合は外貨を売買することによってバンド「Band(政策空間)」にもどす。このバンドの「B」。非公開のバンド。

 次の「B」は、通貨の「バスケット」の「B」。複数の通貨とリンクさせ、輸出競争力維持に有効だろうということです。

「C]は「クロール」。「這う」とかのクロールです。

 ◎BBC型為替制度
   B ---- band  (レートの変動幅)
   B ---- basket(通貨バスケット)
   C ---- crawl  (這う)

 水泳のクロールですね。

 はい。為替水準を秩序だって調整することを意味しています。

 しかし、人民元が依然として米ドルとリンクしていることは明らかですよね。

 はい。非公開にこだわるのも、それを公にしたくないからでしょうか。実際の経常取引は、あまり欧州とは行われていないわけですから、対ドルのレートが重要なのは明らかです。

 ま、管理フロート制になったということがポイントです。管理フロート制とは、具体的に言えば、1日あたりの人民元対ドルレートの変動幅を0.3%、(対ドル以外通貨のレートの変動幅は1.5%)とする制度。そうすることで、元レートに、弾力性が生まれました。

 このときの改革は、次のようにまとめられます。

(1)人民元対ドルレートを2%切上げ
(2)人民元のドルペック制を放棄
(3)「市場供給に基づいた通貨バスケットの調整を行う管理フロート制」を実施


<都内スタジオにて>

 今年、2007年5月18日にも、1日の変動幅が、片サイド、0.3%から0.5%に拡大すると発表しました。5月21日から銀行間スポット為替市場における人民元対ドルレートの変動幅を変更したのでした。

 皆さん、マスコミも含めて勘違いしているのは、「変動幅」という概念です。

 とおっしゃると……。

 何か、相場の動きを制限しているかのように考えられがちですが、そこまで、動いたら、その日は、もう動かさないというだけです。翌日、また、その価格から0.5%は動くということです。

 つまり、「ストップ高」「ストップ安」というほうがわかりやすいかもしれません。

 なるほど、そうですね。

 ドル円とか、他の外貨でも、「ストップ」があると、楽かもしれませんね。(笑い)

 いえ、冗談です。本当は、市場に、「ストップ高」「ストップ安」はないほうがいいかと考えますが、確かに、そういわれると、わかりやすいですね。

 理論的には、私も、「ストップ高」「ストップ安」はなくてもいいとは思いますが、信頼されつつ、しかも、修正可能な方法として、仕方がないとも考えています。

さて、変動幅の説明に戻ります。

1日に0.5%ですから、同じ方向に動き続けるとすれば、月に1割も変動するということです。

 なるほど、毎日ですから、いわば複利の計算ですね。

円で考えると、月に10円以上、いえ、もっとか……、12円ほどの変動を許すということですね。

 実際に、5月は、1$=7.6502元程度だったのが、7月は、1$=7.5737元、8月は、1$=7.5691元、つまり、7月までに8.4%、8月までに8.41%程度の元高になっています。

 かなりの弾力性です。

 グラフを見れば、わかりますが、月末値が月中平均よりも下になっていますから、これは、徐々に元高が進んでいるということです。

                       

                 ~次回(「人民元切上げの行方 その2~中国の通貨制度改革の展望~」)へ続く~

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