中国の全国政協委員(日本の国会議員に相当。ただし、全人代と違い、政協会は決定権を持っていない。提案だけを行う)で、華東師範大学商学院院長の黃澤民先生が、5年ぶりに、6月から7月にかけて訪日されました。セミナー、大学でのレクチャー、日本経済新聞、NHK等々、マスコミのインタビューと、精力的に活動され、その合間に、立正大学経済学部教授の林康史先生、また、弊社社長・潘福平とも座談会を行いました。

林康史先生は、今年から華東師範大学商学院の客員教授もされています。また、潘は、来日する前は、華東師範大学商学院で教鞭を取っていましたので、黃澤民先生は、潘にとって、年長の同僚ということになります。現在も、親交があります。

ちなみに、この対談は、来日時の黃先生の発言、また、インタビューで構成しています。

<ゲスト>
華東師範大学商学院院長 黃 澤民氏
立正大学経済学部教授 林康史氏

<聞き手>
㈱くにやす・FX社長 潘福平

Ⅱ.人民元切上げの必要性の背景

   ~ 人民元為替レートに対する外部からの圧力は長期的~

 それにしても、人民元為替レートに対する外部からの圧力は大きく、また、長期的ですね。特に中米貿易の不均衡は拡大の一途を追っており、2005年には1141億ドルの黒字を記録し米国の不満を招いています。

 米国は、自国の貿易赤字を問題にして、政治的な問題も絡めて、圧力をかけるという状況でしょう。

さて、貿易という点では、表1-2で示されたように、中国の対外貿易には重要な特徴があります。

中国の貿易規模が拡大し、貿易小国ではなく、世界第3位の貿易大国に成長し、貿易収支黒字が拡大し続けているということです。

中国における貿易収支黒字の推移

  

 大きいということと、貿易収支黒字の傾向が拍車をかけたものになっていること、の2点ですね。

世界経済に対する依存度合いの急速な高まりも、外部圧力と摩擦を招く直接かつ長期的な原因でしょう。毎年上昇している貿易依存度は2005年には67%に達し中国経済の外部経済への依存度を急速に高め、貿易摩擦を生みやすくしている。

 日本にも、米国と同様に、日本の価格競争力が中国の世界に対する輸出によって悪化しているという意見もあります。

 輸出品目とかは、考えていませんね。(笑い)

しかし、一方で、米中が軋轢を起こしてくれるほうがありがたいと思っているところもあるでしょう。(笑い)

 日本に、別の理由をあげる人もいます。中国の輸出価格の低さが、日本のデフレ脱却を難しくしているという意見です。

 その意見は、デフレが観察されはじめたころにも言われました。中国の廉価な労働力が日本のデフレの原因だと。日本の需給ギャップではなく……。

 ま、原因かどうかは別にして、日本のデフレ脱却を難しくしているというのは、そういう面もあるかもしれません。

 中国の貿易収支黒字の対策は、元高政策が一番でしょうか。

労働力が日本のデフレの原因だと。日本の需給ギャップではなく……。

 それがわかりやすいということでしょうか。それ以外にも、輸出関税率を引き上げたりもしています。


         <六本木ヒルズにて>

Ⅱ.人民元切上げの必要性の背景(続き)

~人民元為替の改革に対する内部からの必要性~

 中国サイドの問題もありますよね。

 基本的には、為替レートの問題は国家の通貨主権に属するため、他国が為替の水準や制度、政策の変更等を要求する権利はありません。

しかし、中国から見ても改革の理由があります。例えば、 

①国際収支の均衡を促し、対外貿易への依存度を低下させる

②エネルギーと資源の消耗を減らし、経済と環境との調和を促す

③合理的な外貨準備を維持し、徐々に過剰流動性問題を克服する 

 の3つです。

中国としても、貿易摩擦を解消し経済的衝突を緩和するために、人民元為替制度のさらなる改革推進が必要になることは間違いないでしょう。

 高い対外貿易依存、また、大規模な外国直接投資により形成された外向型の経済構造は短期間で変えられるものではありませんから、人民元為替レートの問題は、長らく外部からの圧力を受けると思います。


     <六本木ヒルズにて>

Ⅲ.人民元為替制度変動の方向

 人民元為替制度変動の方向としては、いかがでしょうか。

人民元の秩序ある切上げを通じて、国際収支の均衡的な発展を目指すことが必要でしょうか。

 そうですね。簡単に行政手段を使って人民元為替レートを変更するのではなく、より弾力性のある人民元為替制度を確立し、積極的な市場介入を通じ、市場における合理的な予測を導くという「人民元高」政策が望まれます。相当長い時間をかけ、動態的な為替目標域の中心レートを合理的な水準に切上げさせ、国際収支均衡の目標を達成する必要がありますね。

 どういう問題が残っているのでしょうか。

 国際収支などから考えて、すぐに完全な自由変動相場制に移行するのは無理があります。7割という高い対外依存ですから、急激な変更は、失業等、別の問題を引き起こす可能性があります。

その意味で、現行の制度は、緩やかに、しかし、確実に元高にしていくわけですから、そうした「過渡期」の後に、自由変動相場制に移るのだと思います。

かつて、「管理フロート剖」の実現への課題は、いくつかあると述べていましたが、それらがどの程度実現されるかが、指標となるかもしれません。①企業の外貨保有制度の緩和、②銀行の外貨制限のさらなる緩和、③法人及び個人の外貨購入制限のさらなる緩和、①資金流出制限を緩和し、民営企業の海外直接投資を促進、⑤国内法人及び個人の海外金融市場への投資を認める、等々、です。

これらの進捗状況を見ておけば、タイミングも見えると思います。

 どのくらいの期間がかかるのでしょうか。

 難しい質問ですね。資本の自由化は進んできていますから、ま、5年後には、ずいぶんと違った状況になっていると思います。そのころでしょうか、私見としては。

 私見では、もっと早い時期に、自由変動相場に移行するのではないかと思っています。もちろん、資本移動の規制緩和等の状況にもよりますが。

中国にとっても、そんなに悪い話ではないはずですし。

 今日は、どうもありがとうございました。

文責:くにやす・FX

為替の項=

      

                 ~次回(「中国経済の現状 ~バブルって、本当?~」)へ続く~

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