「まゆか・FXデビュー」「為替の仕組み・読み方」に続く初心者シリースの第三弾「テクニカル分析入門」堂々スタート!

 テクニカル分析、チャート分析の解説に入る前に、林先生がなぜテクニカル分析を勉強するようになったのか、その経緯を述べていただきます、これからテクニカル分析を勉強する人には必読です!!


「プロローグ テクニカル分析への招待」

4 説明できないものを大切にしよう

  テクニカル分析は非合理な発想も含む


<「二分の一戻し」を説明できるか>

  「世の中には、わりきれないものがたくさんあります。ところが、ときとして非常に重大な出来事がまったく葬られることがあります。われわれの精神は現代の科学や哲学の領分に入らないものを排斥する傾向をもっています。彼らは、現在流行の理論で説明できないものは存在しないものだと思いこんでしまします。ゆえに、われわれは人間をあらゆる方面から冷静に観察し、何事をも無視せず、見たまますべてを簡潔に記述することをやり直さなければなりません」
 アレキシス・カレル(フランスの外科医・生物学者。ノーベル生理・医学賞)の言葉です。
 テクニカル分析は科学的な見方をするときもあれば、一見非合理な発想も含みます。たとえば「二分の一戻し」です。市場参加者で知らない人のない言葉です。しかし、反転したときの戻しがどうして半分なのか、説明できる人はいません。
 では、そうならないのでしょうか。なるのです。偶然かもしれませんが、なることが多いのです。


<チャート分析になぜ黄金比を使うのか>

 黄金比(golden section)というのをご存じでしょう。パルテノン神殿の柱の間隔に使われた、人間の美的感覚に合うとされる、六一・八%を基準とする比率で、テクニカ分析でも頻繁に出てきます。たとえば、上昇した価格分の六一・八%、三八・二%下落するというふうに使用するのですが、その科学的根拠は見いだせません。
 しかし、科学的根拠は見いだせないことと科学的根拠がないということとはまったく次元の違う話です。人類が進歩すれば、いつの日か科学的根拠が発見されることがあるかもしれません。
 話は飛躍しますが、たとえば、キニーネというアルカロイドがマラリアの特効薬であることは現在では周知の事実です。しかし、ヨーロッパ人が最初にアメリカ大陸を訪れたときには、その関連性は証明されてはいませんでした。
 では、その当時キニーネがマラリアに効かなかったといえば、そんなことはありません。中途半端な西洋医学は近代医学のみしか信じていませんが、それはその人の知識がそのレベルにまで達していないからでしかない場合が多いのです。
 民間医療に限らずどの分野でも、現代ではどうもうさん臭いが、やがて、自明の理になる説が存在することは十分ありえることです。「この大地は丸い」「この大地が動く」などと言うと狂人の扱いを受けたのは、それほど昔の話ではありません(そのような迫害を受けた側のガリレオも、海の干満は月の影響だというケプラーの説を占星術にすぎないと見なしていたのですから、こうした偏見は意外に根深いといわざるをえないのですが)。

<チャートなんかで相場がわかるはずない?>

 たとえば、数学の世界でもファジー理論のような発想が受け入れられるようになったのは、たかだかここ二〇~三〇年のことです。現在の人類の知恵というのも限られたものでしかないのかもしれません。科学的でないということを真に科学的に証明するのは簡単なようでいて案外難しいのです。
 実はかくいう私も初めは検討もしないで「チャートなんかで相場がわかるはずがない」と思っていました。ただし、よく考えると、こういう否定の仕方こそ科学的な態度ではないのです。
 たまに、テクニカル分析のセオリーから外れた例をもってきてテクニカル分析は当たらない、という人がいます。しかし、テクニカル分析の根拠というのは統計的なものでしかないわけですから、例外も存在します。
 百パーセントの完璧さに耐えなければならないとすると、ファンダメンタル分析も含めて、現在の相場におけるセオリーはすべて成立しなくなってしまいます。


<占星術で相場を予測する?>

 狭義の合理主義は捨てましょう。それは否定につながり、自らの視野の狭さを示すことになります。魚のトゲの数のみを知りたいのなら、ホルマリンの中の魚を捕りだして数えればよいのです。しかし、そうして得た事実とはいったい何なのでしょうか。
 「ホルマリン漬けとなった魚を前にした男は、必死にひとつの事実を記録してはいるが、自分の経験、記憶の中には自分が本当に見たとおりのものを記さないで、たくさんの嘘を刻みこんでいるのだ。この魚はこんな色ではない。こんな肌ざわりではない。このような匂いを放ちながら、あんな具合に死んでいるはずもない」
 文豪スタインベックが喝破したとおりです。

 また、話が飛躍してしまいますが、たとえば、スリランカでは閣僚の就任式などは占星術で決めるといいます。アメリカでレーガン大統領夫人のナンシー女史が占星術に凝って、ジョン・キグリーという占星術師にいろいろと相談していた話は有名です。
 日本テクニカル・アナリスト協会にも占星術で相場を予測する人がいます。満月のとき相場は上昇するという話もあります。
 テクニカル・アナリストの多くはテクニカル分析を研究するうちに、そうした側面を否定しなくなるようです。私が師事した故・本郷元秀氏に(先生は講演会でもファンダメンタル分析しかはなさなかったので、彼がテクニカル分析の権威であり、占星術にも詳しかったということを知る人は少ないのですが)私が「次はどのテクニカル分析手法を勉強したらいいですか」と尋ねたところ、「一般的な知識はもういいから、天体の運行を勉強しなさい」と言われたこともあります。
 個人的には、占星術を信じているわけではありませんし、そこまで踏みこむ勇気もありませんが、否定もできないと思います。非科学的だという批判は科学的になされなければなりません。
 賢者はどうしても数値偏向、狭義の合理主義に陥ってしまいます。ただし、それでは本当の賢者ではない、という気がするのです。因果関係が明らかなものしか受け入れないのは狭義の合理主義でしかないでしょう。


<相場にかかわる者は不可思議な部分を受け入れる必要がある>

 ボーアという原子構造の研究で知られたデンマークの物理学者がいます。彼の家の入り口に馬の蹄鉄がぶらさげられていたといいます。弟子の一人が訝しんで「先生もこういった迷信を信じるのですか」と聞いたところ、ボーアは「信じちゃいないが、ご利益があるらしい」と答えたというのです。
 テクニカル分析には、非常に科学的・数学的にアプローチする手法もあります。しかし、一概にはいえませんが、相場に携わる者は不可思議な部分も含めて受け入れざるをえないのかもしれません。
 テクニカル分析のことを魔術か何かのように考えている人がいますが、現代の科学のレベルから考えると、ある種のテクニカル分析にはそうした側面があることも事実でしょう。

                         

                             ~次回(「5 テクニカル分析vs.ファンダメンタル分析」)へ続く~

「プロローグ テクニカル分析への招待」
vol.1
1 テクニカル分析への入り口-相場の変動要因はいろいろある
2 テクニカル分析と微分の話-テクニカル分析は理由探しをやめること
vol.2
3 テクニカル分析とチャートの関係は?-チャートはテクニカル分析のスタートライン
vol.3
4 説明できないものを大切にしよう-テクニカル分析は非合理な発想も含む
vol.4
5 テクニカル分析vs.ファンダメンタル分析-対峙するのか、同源なのか
vol.5
6 アンチ・チャート論について考えてみよう-テクニカル分析に対する偏見・誤解に答える
vol.6
7 テクニカル分析の特徴-重要な特徴が二つある

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