一部の通信社が「本格的な円キャリー・トレード巻き戻しが始まる」と騒ぐ一方で、冷静な資金運用者は外貨押し目買いの好機と捉える。 それもそのはず、・・・
世界経済が過去30年で最も力強く推移し、かつ主要各国は適度なインフレが続き、マーケットは歴史的な低ボラティリティーという好ましい環境とあっては、グローバル・キャリー・トレードという安定収益を生み出す“打ち出の小槌”を手放すはずもない。
日本の通貨司令塔である渡辺財務官は昨夕、2月のG7会議では円が安すぎると指摘する方もいるかもしれないが、円安を主要議題としてハイライトすることはないとの認識を示した。
そもそも円が主要通貨に対して安いのは、インフレ格差や金利差を反映した結果であり、かつてのような“円売り介入という為替操作”ではなく、“金利裁定という市場調節機能”が働いているのである。
こうした市場調節機能が通貨安を通じて物価上昇や長期金利の上昇圧力をもたらすわけであり、当該国の金融政策・財政政策を補完する重要な役割を担っているといえよう。
仮にG7会議が声明でこうした市場調節機能を無視して円安を非難すれば、ご都合主義の寄せ集まり会合として市場の信認を失うことになるほか、マクロ経済政策(金融政策・財政政策)の変更を伴わなければ、円安けん制は一時的な効果しか期待できないことになる。
かといって世界第2の経済大国が円安是正のために矢継ぎ早に金利を引き上げ、デフレに後戻りすれば、世界経済にとって大きなダメージとなる。 また、財政政策は膨大な赤字を抱えているため、かつてのようなばら撒き財政で内需拡大をする余裕はなく、2007年は定率減税の全廃や社会保険・年金保険料率の引き上げなど国民負担はむしろ増しているのが現実である。
つまり、足元の円安は「緊縮財政+金融緩和」というポリシー・ミックスにより導かれた整合的な動きであり、この組合せが崩れるか、インフレ警戒の金融政策を採る主要各国のポリシー・ミックスが変更されない限り続くことになろう。
とはいえ、保護主義台頭のリスクを抑える目的で非公式な形での円安けん制がなされる可能性は念頭に置いておきたい。
最も警戒すべきは、G7などの国際会議よりも昨年5月に発生したような「グローバル・リスク・リダクション」の動きであり、世界的な株安や国際商品急落が一斉にリスク忌避的な投資行動を招き、円キャリー・トレードの巻き戻しが急激な円高をもたらすという事態を回避することである。
その候補の一つが米長期金利の急騰であり、昨年5月の「グローバル・リスク・リダクション」はバーナンキFRB議長の失言がトリガーを引いており、同氏はそれ以来公式には一斉の発言を控えてしまった。
米国株の代表的な投資家センチメント・インディケーターであるVIX指数(別名「恐怖心理指数」)は、歴史的な「楽観」の領域に位置するものの、この楽観は長期金利の低位安定に支えられてきたことを忘れてはならない。
昨日発表された米12月-中古住宅販売は、前月比では0.8%減少したが、在庫が7.9%減少したほか、住宅価格が2.3%上昇し、住宅市場の底入れを示唆するシグナルと受け止められ、長期金利は急騰(=債券価格は下落)、米主要3株価指数も急反落している。
昨年後半は、米長期金利が低下する過程で海外勢による対米証券投資が拡大しており、長期金利が5%を超えて上昇する場合には一斉に流出する可能性はリスクシナリオとして念頭に置いておく必要がありそうだ。
米政策当局にとっては、長期金利の低位安定に寄与するドル高が一段と重要になっているといえよう。
ところで、今朝発表された12月-全国消費者物価指数は日銀の標準シナリオを揺るがすネガティブなインパクトをもたらしている。
早期の金利正常化論を掲げる日銀内のタカ派メンバーは、物価下落の背景要因である原油価格の下落はインフレ懸念を低下させる効果よりも景気刺激効果の方が大きいと予防線を張るが、物価面からは早期利上げの緊急性は乏しいと思われるが・・・。







