今週明けの為替マーケットは、アジア主要市場および米市場の休場に伴う流動性の低下に加え、21日に日米主要イベント(日銀政策決定会合と米CPI)を控えた様子見ムードに覆われたが、円は小幅ながら売り戻される展開となった。 ・・・
こうしたなかで唯一大きな動意を見せた通貨は筆者と相性の良い「英ポンド」である。 BOEが英議会に提出したリポートに「経常収支は最終的には均衡化する必要があり、そのために実質実効為替レートの下落が必要になる」と指摘した部分があり、ここに着目した短期筋が猛烈なポンド売りを仕掛けるという一幕があったが、このあと何事もなかったように急速に買い戻されている。
ところで、ここにきて一部主要国などのインフレ見通しの低下を通じて世界的な利上げ観測が後退し始めており、潮目の変化を察知してかドル安・円高論が俄かに勢い付いている。
今朝のNMS(ニュース・モーニング・サテライト)では伝説のディーラーW氏が登場、円安は終焉しつつあるとして「2010年まではドルの戻りは全て売り」という相場観を披露していた。
同氏による円安終焉の根拠は、①米住宅バブルの崩壊、②日米金利差縮小、③ドル/円の8年周期、―――の3つを掲げている。
①の米住宅バブルの崩壊については、「ITバブル崩壊のツケを住宅バブルで埋めるという手法はどう考えてもおかしい」という説明にとどまっていたため、同氏の思慮しているところまでは理解できていない。
ただ、FEDは過去5年間に及ぶ住宅ブームの局地バブルの軟着陸に向けて「慎重なペース(=measured)」の利上げを06年6月まで続け、現在は利上げも利下げもしない様子見姿勢に転じている。
これにより米株式・債券価格は大きく上昇(長期金利は低下)しており、結果的に住宅市場の急減速に伴う逆資産効果は表面化しておらず、雇用情勢も底堅く推移している。
敢えて同氏の解釈を借りるとすれば、今回は住宅バブルのツケを資産価格の上昇によって穴埋めするという構図になり、米資産市場の堅調を維持するためには強いドル政策が重要な役割を担っているということと同義であり、ドル安・円高への転換とは相容れないことになる。
②の日米金利差縮小については、同氏は「日銀は2月の追加利上げを含めて年内に3回の利上げを実施し、政策金利を1.00%まで引き上げる」とのシナリオを描いているようだ。
確かに、日銀が年内に3回の利上げを実施すれば、金利差着目型のジャパン・マネーが国内回帰する可能性は否定できない。また、超低金利を前提にリスク無視で拡大してきたさまざまな円キャリー・トレードが巻き戻される可能性も出てこよう。 同氏が示した、今週中に116円、5月に109円、来年前半に向けて100円前後のドル安・円高が進展するとの見通しも排除することはできない。
しかし、現実論としてゼロ金利解除(2006/07/14)から半年が経過してもなお、一度も追加利上げに踏み切ることができなかったのは、政治的な圧力だけでなく、消費や物価で弱い指標が出ていることが最大の要因であり、昨年10-12月期GDPが事前予想を大きく上振れたにもかかわらず利上げ予想が五分五分にとどまっているのもそのためである。
今週の『森レポート』P.4では「金利正常化プロセスのコミュニケーション・ポリシーは連続利上げの思惑を高めないこと」と述べたが、現状では年内3回の追加利上げを正当化する経済・物価情勢は想定しづらい状況にある。 むしろ、消費者物価指数が3月にもマイナスに転じるリスクが燻っており、明日の政策決定会合では利上げ幅が25bpではなく10bpの小幅にとどまったり、見送られる可能性も否定できない。
さらに、W氏が掲げた①のシナリオが現実的となれば、日銀が連続利上げに踏み切る可能性は一段と低下することになろう。 何より、日本の金融当局者は円高で苦労した苦い経験を有しており、日米金融政策のデ・カップリングは非現実的といえよう。(⇒米国が利下げに転じるときに日銀は利上げしない)
③のドル/円の8年周期については、ドルが8年ごとにピークを付けるというサイクル理論である。
ドル/円のピーク(終値ベース)は1974年1月の300円―1982年10月の277円―1990年4月の159円―1998年7月の143円となっており、サイクル分析をしている者の間では次のピークは2006年頃として注目されてきた。
これにより、今朝のNMSでW氏は今年1月29日の122.20円(⇒終値ベースでは120.70円)が8年周期のピークと捉えており、2010年に向けて80円までのドル安・円高、その後は再び8年周期のドル高・円安を目指すというシナリオを披露していた。
しかし、この8年サイクルは、これまでドル下落5年とドル反発3年というリズムのなか、Lower-low、Lower-Highというドル下落トレンドを形成してきたが、98年のピーク後の安値は前回95年4月の安値83円を下回ることはなかった。 放送時間の制約もあってW氏はこの点について言及していないが、8年サイクルの相場リズムが崩れていることを示唆しており、現状では長期のドル下降トレンドラインを上抜くという事実を無視することはできない。
いずれにしても、筆者のような超短期のトレードを行う者にとっては長期的な相場見通しは必要ないが、敢えて付け加えるならば持続可能な相場トレンドの方向性はマクロ経済政策と整合的であるかどうかが重要であり、特に日米金融政策がカギを握ることを念頭に置いておきたい。







