円安を見込む一方向の取引リスクに注意喚起した独エッセンG7(02/09-10)、そして低金利継続を通じた資金フローの歪みをリスクシナリオとして追加利上げを決定した日銀政策決定会合(02/20-21)ーーー
それでも円安に歯止めは掛からず、足元では円独歩安の様相を呈している。
今朝の日経金融新聞一面は、「円安安住の危うさ」という大見出しを掲げ、円キャリー取引の再拡大が市場混乱リスクにつながるとの警告を行っている。 また、NYタイムズは「円キャリー・トレードはいつ終わる?」との投資家の関心について記事を掲載している。
こうした記事の執筆者はどこまで円キャリー・トレードの実態を把握しているのだろうか?
キャリー・トレードがまるで不正取引のような扱い方をしているが、広義には個人投資家による対外証券投資や外国企業・政府機関などによる円建て外債(サムライ債)の起債も含まれ、低金利通貨の活用は経済グローバル化がもたらした一つのメリットでもある。
こうした取引は、円金利が低いだけでは活発化することはなく、パラダイムシフトともいえる構造変化を伴っている点は見逃せない。
その主な背景要因となっているものは以下の4点が挙げられよう。
①世界的な景気拡大とカネ余り ⇒ 主要各国のマクロ経済政策はインフレ警戒型にシフト
②市場ボラティリティーの低位安定 ⇒ リスク許容度が高まり資産価格の上昇をうながす
③日本経済の長期デフレからの脱却 ⇒ 累積的な金融緩和効果が表面化する
④日本の家計資産の貯蓄から投資への動き ⇒ 2005年を投資元年とする本格的な投資ブーム到来
昨日のコメントでも採り上げたが、日本経済がデフレスパイラルの悪循環から抜け出したことの意味合いは大きく、当時は量的緩和で超低金利が続いたにもかかわらず円高で苦しめられたが、デフレ脱却となると今度はリスク許容度の高まりと累積的な緩和効果で国内に滞留した投資マネーが一斉に動き出すことになる。 また、少子高齢化という日本の構造問題が年金に対する将来不安を煽り、預貯金・現金に偏重した家計資産が「貯蓄から投資へ」のブームに乗って動き出しているのである。
ちょうどこのタイミングで、個人金融資産の4分の1を占める「団塊の世代」(1947年から49年の3年間に生まれた役680万人)が退職を迎え始めるため、老後に備えた資産運用は不可欠となっている。
つまり、現在の円安をもたらしている要因は一過性のブームで終わる可能性が低いことを示しているといえよう。 今朝のNMS(ニュース・モーニング・サテライト)では、邦銀の為替ディラーが「使い古された要因でいつまでも円安が進むはずもない」などとコメントしていたが、こうした市場参加者や円安を警告する記事が出ている間は安心かもしれない。
但し、昨年5月にみられたような「グローバル・リスク・リダクション」が発生する状況下では、ファンダメンタルズに関係なくあらゆる市場ポジションが一斉に巻き戻されるリスクが高まるため、特に米長期金利の動向を注視していきたい。
現在の米国経済は、ゴルディロックス・エコノミーと評価され、FRBが現行の金融政策を変更する必要がないほど良好な状態にあるといわれている。
しかし、現実的には膨大な経常不均衡の問題を抱え、足元では住宅市場の急減速とコアインフレの高止まりという問題に挟まれ、金融政策面では利上げにも利下げにも動けない状態となっているのである。
住宅市場や製造業に配慮して利下げに踏み切れば、インフレ高進リスクを一気に高め昨年5月の再来を引き起こしかねない。かといって、インフレ抑止で利上げ再開に踏み切れば、住宅市場や製造業を一気に冷やしかねず、現状では強いドル政策を志向せざるをえない状況となっている。
(⇒昨年5月の「グローバル・リスク・リダクション」は、4月末にバーナンキFRB議長が「インフレリスクが均衡しなくても利上げを休止する可能性がある」と述べたことや、ワシントンG7に向けてアダムス財務次官がドル安容認をほのめかす発言を行ったことなどで、米長期金利が急騰し米株式・債券・ドルが売られた)
最も警戒すべきは米長期金利の急騰につながりかねないリスクの排除であり、その候補となり得るのは米議会発の保護主義台頭であり、地政学的な不確実性となってくる。
独エッセンG7前に欧州サイドから円安をけん制する発言が相次いだが、ポールソン米財務長官は同調することなく「円安は開かれた競争的市場で決められている」と述べたのは、保護主義台頭を抑え込む必要性があったからにほかならない。 バーナンキFRB議長も半期・議会証言の中で同様の発言を行っており、保護主義台頭が米国からの資本流出を通じて長期金利の急騰をもたらすリスクを警戒しているといえよう。
また、先の六カ国協議で米国が北朝鮮に大きく譲歩したのは、イラン情勢の緊迫化が想定される状況下での二正面リスクを回避する必要性があり、東アジアの安定を優先したと解釈することができよう。
中東発の地政学リスクは市場でのドル離れを招き、米国のインフレ圧力となって長期金利の上昇をもたらすため、足元のイラン核問題についても国連安保理の枠組みの中での慎重なスタンスが採られている。
米国にとっては、従来以上に「強いドル政策」が重要になっており、マクロ政策面での日米利害一致が当面の円安基調をサポートすると捉えることもできよう。







