2007年1月4日
立正大学経済学部
教授 林 康史
2007年の相場つき
2007年を迎えた。今年は、どのような年になるのであろうか。また、外国為替相場はどのような変動を見せてくれるのであろうか。
米国の大統領選挙の年の前年は、ドル円相場は大きく動くことが多かった。1998年の改正外為法の施行以来、ドル円相場は割合と安定的な動きを示しており、マーケットのボラティリティは縮小しているようだ。この2つのうち、いずれに軍配があがるのであろうか。
また、人民元の制度はどのようになるのであろうか。一般的には、2008年の北京オリンピックか、2010年の上海万博あたりまでは現状を維持していくものとの見方が多いようだが、意外に早く、変動相場制に移行する可能性もあると私は考えている。また、その際、必ず、元高になるという思い込みも危険かもしれないと思う。
レバレッジと金利
さて、先日、ある新聞社から取材を受けた。1月の紙面で今年の投資について述べて欲しいというのである。「50歳で、1000万円の余裕資金があり、ローンなどは残っていない」人は、今年、どのように投資を始めるべきかというものだった。まだ、掲載されてはいないので、詳細は書かないが、外国為替の証拠金取引については、以下のように書いた。
※ ※ ※
(残りは)外為証拠金取引に充当する。個人的には10万円の証拠金で1万ドルの取引ができる程度のレバレッジを選択したいが、これは投資経験によって異なるだろう。
ちなみに、これは、為替差益を狙うのではなく、金利差を取りに行くのを基本としたい。相場が動かないのであれば、業者などによっても異なるが、1万ドル分の金利差であれば、10万円の証拠金に対して55パーセントほどのリターンが期待できる。ドル円レートに換算して、5.5円程度のアゲンストは耐えられることになる。もちろん、金利差を取りに行くのであるから、円買いポジションはとらない。
ただ、あまりアゲンストに振らされると厳しいから、買い場は慎重に考えたい。私見では、1~5月にドルのボトムが来る可能性が高いと考えており、1~5月のそれぞれ中下旬に1万ドルずつを購入するというのもいいかもしれない(中下旬という意味は、ボトムの前に買うのではなく、ボトムが過ぎてから買うという意味である。アゲインスト<含み損のある状態>の時期は短いほうがいいからである)。それぞれが10円以上の為替差損を被る可能性が高いと思うなら、持てないポジションということになるが、そうはならないだろう。もし、そのような事態になれば、ロスカットするか、予備費の充当も検討する。
※ ※ ※
これを紹介したのは、意外に、レバレッジをかけて金利差分を取りに行くということの意味をわかっていない人が多いからだ。高金利通貨の売りポジションは、レバレッジの影響で致命的な損失につながることがあることを強調しておきたい。
上記の内容を紹介したもうひとつの理由は、「1~5月にドルを購入する」ということの意味を書いておきたかったからだ。
マーケットの季節性
商品、特に穀物相場にはタイム・サイクルや季節性があることはよく知られているが、季節性は通貨にもあるのだというと、驚く人が多い。一見トレンドに見えても、実は循環だったということも多く、そもそも循環という視点を持っていない人もいる。
相場に限らず、総じて予測の際には、トレンド(傾向)か、構造変化か、循環かといった視点での分析が欠かせないのであるが、循環の一部分がトレンドに見えたり、循環の折り返しの部分と構造の変化を取り違えたりする。
特に、人は近視眼的になりがちで、循環という視点から物事を見ることが苦手なようだ。しかし、相場にも循環があり、それが1年毎に観察されるものもある。それが季節性である。
例えば、米国株は「5月に高く、9月と10月に安い」という経験則がよく指摘され、その背景は税金と決算だと言われる。実際に調べてみると、おおむね「5月に高く、9月と10月に安い」という傾向が確かに見てとれる。
このような季節性が存在する背景は税金と決算だと言われる。2月から5月は税の還付金が戻ってくる時期で、毎年15兆~20兆円もの巨額な資金の一部が株式市場に流れ込む。秋は、個人投資家が年末に向けて納税額を減らすべく損失確定を行う(株式の譲渡損益は給与所得などとの損益通算が可能なので損を確定するために売りに出る)ため、売りが増えやすいのである。また、ミューチュアル・ファンドは決算が10月末に集中しているので、そこに向けて損益を固める動きが出るという。
日本株にも季節性があり「5月~6月に天井、9月に底」と言われることがある。最近は数えていないが、1990年~2003年の記録では、14年間に11回あった天井のうち6回が5~6月に集まっている。底はこの期間に12回あり、そのうち5回が8~10月にある。だいたい経験則通りになっていることがデータからもわかる。ちなみに、日本株のこうした動きの背景は、「米国株の動きに連れて」という以外には見当たらないようだ。ちゃんとした説明ができない現象がしばしば観察されることをアノマリーというが、日本株の「5月~6月に天井、9月に底」という季節性もアノマリーである。
円ドル相場ではもっと明確にトレンドが反転しやすい月が存在する。過去17年間を調べると、中長期的な天井と底はだいたい34回で、1月が天井か底になっているのは8回、4月が6回。1月は2年に1回は天底を形成し、4月も3回に1回以上が天底になっている。1990年に160円をつけたのは4月、1995年に79円75銭をつけたのも4月だった。
その理由はよくわからない(こうしたドル円の季節性もアノマリーである)が、私見では、1月は新年の始まり、4月は新年度の始まりで、新しい「時」が到来したために人間の行動パターンが変わりやすいことも、こうした季節性の背景にあると思われる。
この季節性をどう使うのかと言うと、例えば1月に底入れしたと思うときには、1月下旬から2月にかけて買いポジションをとる。1~2週間のスイングのポジションは当然のこと、より短めのポジションも買いから入るようにする。
このように、天底になりやすい月などということも、知っているのと知らないのとでは大違いだ。テクニカル分析の指標とともに、これらも併せてポジションをとるときの参考にするわけである。
もちろん、季節性以外の循環も考えないといけない。例えば、1年弱のサイクル、2年のサイクル、5年のサイクルなど、現在がそれぞれの循環のどの局面かを考えなくてはならない。
皆様、本年もよろしくお願いいたします。






