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相場における「ツキ」とは何か

2007年2月22日

板垣哲史

 先月、ギャンブルとトレーデイングの共通点と相違点について述べたが、究極の相違点は、「遊び心」と「本気」、「余暇」と「本業」と言う言葉に表されるように、生きていく上での目的が根本的に違いことについて話したつもりである。

 共通点については「数勘」が大事であり、経験と確率論を体得することにあると言ったが、実はギャンブルもいろいろな種類があり多岐に分かれているのでより詳しく分析してみよう。
 ギャンブル社会学の権威である元大阪商業大学学長の谷岡一郎氏によると、ギャンブルは回数を重ねていくと、ほぼ間違いなく赤字になっていくそうだ。確率論から見ても、勝・敗半々でも場代(通常3%から5%)の分は取り戻せないことになる。
 その中でも特にルーレートや丁半賭博などスキルが入り込む余地のほとんどない運任せのものは、回を重ねると誰でもほぼ間違いなく赤字に転落するそうだ。さらに付け加えるなら、統計学上、最も赤字になる確率が高いのは、競馬・競輪・競艇・宝くじなどの公営ギャンブルだそうだ。これは、あまりにも高い比率の胴元(公的機関)のテラ銭が原因といわれる。勝者、敗者に掛け金の全てを公平に分配されていないからである。
 ところが、バカラやポーカーなど、その人間の技術(スキル)、経験、読心術などが、ものをいうギャンブルは、勝ち続ける可能性があると言われる。
 よって、ここには「本業」のプロのギャンブラーが存在する余地がある。
 プロのギャンブラーを主人公にした映画がいくつかヒットしたが、息を呑む迫真の演技の見所は、相手の手の内を相手の微妙な表情の癖やしぐさの変化で見抜き、勝負する一瞬である。
 実は相場の世界でもこの心理分析は極めて有効なことがある。今、同じ立場でマーケットに参加している人々の心境を把握し、自分と同じように買い持ちとなり相場が上がることを、市場参加者のほとんどが期待していると感じたら、逆に売りに回って攻めるというような短期作戦を実行することも有効な場合がある。
 この相場の心理学については次の機会に詳しく述べたいと思う。さて、相場の世界においてはもっと人為的な要素である統計的経済指標の予測や発表、最大参加者である当局のコメントや市場介入まで、相場の先行きに影響を与える情報が氾濫している。このことから推測できるが、トレーディングは、ギャンブルとは比較にならないほどのスケールでスキルの占める部分が多く、したがってギャンブル的要素というよりは、より確率論的要素の方がはるかに強いと言える。チャートなどのテクニカル分析は、市場参加者の心理、需給関係を統計的に把握し、確率の精度を高める手段として発達してきたと言える。
 とは言うものの確率を頼りに参加すれば必ず勝つとは言い切れない。それは「ツキ」というものが存在するからである。実は「ツキ」とは確率論に対立して存在するものである。
  確率論の前提とされるのが「大数(たいすう)の法則」と呼ばれるものであるが、これはスイスの数学者であるベルヌーイ(1654~1705)がベルヌーイ試行として、その原理を方程式化したものである。この原理を簡単に言うと、サイコロの一から六までの目が出る確率は、サイコロを振る回数が多くなればなるほど、それぞれ限りなく六分の一の確率となっていくというものだ。これが「大数の法則」の原理である。
 それではツキとはいったいどういう現象なのであろうか。
 これは数学的に言うならば、「連続して行われる試み(売り買いの回数)の中に存在する数学(確率論)のバラつき」ということになる。
 もしルーレットで「大数の法則」に基づいて赤白勝負をして、どちらが一方に勝ち続けるなら、勝率は50:50にあるはずだが、一万回もやるわけにはいかない。
 であるからわれわれが「ツキ」と呼ぶものは、そのプレイタイム中の確率の論理に他ならない。こう言ってしまえば元も行もないが、「ツキ」がないと感じたら、ゲンをかついだり、休んだりして自分のリズムを変え、再び新たな気持ちで挑戦することによって、相場の波に乗れるよう努力することは決して無意味なことではないといえよう。

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2007年02月22日 10:19に投稿されたエントリーのページです。

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