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嶌峰義清――第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

 外国為替市場では円キャリー取引の巻き戻しから急速に円高が進んでいる。そのきっかけとなったのは27日の上海市場での取引規制の発動が世界的な株価急落をもたらしたことにあったが、その遠因は12月、1月と利上げに動かなかった日銀が、2月20~21日の金融政策決定会合でようやくそれを決めたことにある。その直後にこれ以上の利上げは難しく、日米金利差が高水準の状態が続くとの見方から円安に振れたことが、かえってその後の急速な円高進行のエネルギーを高めたようだ。

 ただ、この急速な円高は最初の2日間とそれ以降とでは、やや状況が変わってきているように思われる。当初、27日に中国発で株価が急落したことで1ドル=120円台から一気に117円台に下げたのは、日銀の利上げ実施後に円安が不規則な形でもたらされた反動による面が強いのではないか。実際、翌28日には株価の動向も含めていったんこの動きが鎮静化したので、この時点で“第一ラウンド”は終わったと見ていいだろう。その後3月に入り1日から週明け5日の東京市場にかけてさらに急激な円高地合いが続いたが、この動きは急速に円高に対するボラティリティが上がってきたなかで、円キャリー取引の“狼狽的”な巻 足元では、円キャリー取引の巻き戻しだけでなく、ここにきて米国で景気減速を示唆する指標の発表が多く見られるようになってきていることで日米金利差が縮小していくとの見方が強まっているため、ドル・円相場はよけいに下押し圧力が強まっている。基本的に株安が止まらないと巻き戻しの動きが続いて円高の動きにも歯止めがかからないだろうが、より投機的な性格が強いコモディティ市場では株価ほど下げていないため、こうした市場に調整の動きが波及するとさらに円高が進む可能性もあり得るだろう。また巻き戻しの動きが収束しても、日米金利差の縮小観測が支配的になっているので、117円台半ばを超える水準まで戻す可能性は極めて薄くなったといえるだろう。き戻しが進むのを意図して、買い煽っている向きがいるようだ。
 今回、急激な円高が到来したことで、ドル・円相場は05年1月17日の101円68銭から始まった上昇傾向は、07年1月29日の122円19銭をつけた時点で終了したと思われる。その上昇幅の0.382倍下げるとすれば114円40銭と、下値のメドは今回の急激な円高がもたらされる以前の06年12月5月の安値とまったく同じ値が算出される。実際、113円台後半から114円台半ばの水準は04年から05年にかけてすんなりとは上回ることができず下落している経緯があるだけに、大きな節目である可能性が高いのではないか。ただし、もしこの水準を下回ってくると、前記の上昇幅の半値押しである112円00銭が視野に入ってきてもおかしくないだろう。
 より長期的な視点で見ると、ドル・円相場は98年8月11日の147円64銭と02年1月31日の135円20銭の高値を結んだ下降傾向線と、95年4月19日の79円75銭と05年1月17日の安値から形成されている上昇傾向線に挟まれた大きな三角保合いを形成していた。最近ではこの保合いを上放れていたものの、足元での急落から再び保合い圏内に戻っており、それまで一時的に上放れたように見えたのは“ダマシ”である可能性が高くなってきている。だとすれば、今度は上昇傾向線が推移している水準をも下回って下放れを模索するような動きになることは十分考えられるだろう。もし完全に下放れると、95年4月19日の安値が大底ではなくなる公算が高まるため、この水準を超えてさらに大きく下げていってもおかしくないのではないか。バブルはやがて完全に崩壊せざるを得ないものだとすれば、米国で住宅バブルが崩壊していくことで、日本を中心とする対米債権国へのリパトリエーションが本格的に生じることは十分考えられるだろう。(3月5日、談)

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2007年03月08日 10:46に投稿されたエントリーのページです。

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