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小瀬正毅――フィスコ 為替・債券担当アナリスト

2007年5月10日

 ドル・円相場は1ドル=118~119円台でのレンジ内で推移した後、日本で連休中の3日に120円台に乗せた。

2月27日に上海市場を皮切りに世界的な株安ショックに見舞われた際に、円キャリー取引の巻き戻しから急速な円高となったことで119円台には大きなギャップが形成されていたが、これを完全に埋めたので、本来なら1月29日の122円20銭の高値を超えて一段高となってもおかしくないはずである。ところが、なかなか上げていけないのは、中国筋が120円台後半から121円台にかけて大量に売りオーダーを出しているためだ。こうした強力な上値抵抗を超えていけるだけのエネルギーが感じられないため、目先さらに上昇していく公算は低いと見ている。

 足元ではFRBの金融政策に市場の関心が集中しており、4月27日に発表された1-3月期の米国のGDP統計(速報値)では実質成長率が1.3%にとどまった反面、デフレーターが同4.0%と極めて高い水準を記録したため、景気減速が意識される一方でインフレ警戒感もさらに強い内容となった。インフレ・ギャップがかなり拡大しているなかで、中国では人件費がかなり上がっており、また議会では保護主義的な圧力を強めていることで人民元への切り上げ圧力も一段と強まる可能性が高いため、将来的には企業が価格支配権を喪失することで消費者物価が目立って上がってもおかしくないだろう。このため、FRBとしては金融政策運営が非常に微妙な局面にあり、現時点ではまだ5月9日のFOMCでの声明文の内容が明らかとなっていないために難しいところがあるが、順当にいけば、結局利下げにも再利上げにも動けないのではないか。ただし、市場では複数回もの利下げを織り込んでいるとはいえ、FOMCの会合が5月9日の後に6月26~27日、8月7日、9月18日に予定されているが、それまでに利下げが行われるのを市場はまだ20%超しか織り込んでいないようだ。このため、これからはどちらかといえば、景気指標の内容が強めのものよりは弱めのものが出た時により敏感に反応してドルが売られやすくなると見ている。

 他方、日銀の金融政策については、参院選が終わる8月以降、年内に最低1回は追加利上げに動くといったことが主要なコンセンサスとなっており、おそらく、福井現総裁が任期切れを迎える来年3月までにもう1回利上げに動き、コール・レートを1%に引き上げるのではないか。ただ、参院選については、低迷していた安倍内閣の支持率が最近では持ち直している一方、民主党はそれ以上に不振にあえいでいる。しかも、自民党自体に集票能力がなくても、民主党も不人気なので投票率がかなり落ち込む可能性が高いが、そうなれば組織票を抱えている公明党が議席を伸ばすことで、自公連立与党が過半数を確保できる公算が高い。だとすれば、意外に日銀は政府・与党からの圧力を受けることなく裁量的な金融政策運営を推進できる可能性もあるため、参院選以前にも追加利上げに動くこともあり得るのではないか。いずれにせよ、日米の金融政策面ではドル・円相場はそれほど大きな動きは見込みにくいとはいえ、どちらかといえば下がりやすいといえるだろう。

 こうしたなか、気になるのは、米国で景気が減速傾向にあるにもかかわらず、ダウ平均が1万3,000ドル台に乗せてきているなど大型株中心に株価がさらに上昇していることだ。利下げ観測やそれによる今年後半以降の景気再拡大を織り込んでいるのだろうが、気になるのは、米国内で景気が減速しているだけでなく、中国で人件費の上昇圧力が強まっていることや、人民元がさらに切り上がっていく公算が高まっているなかで、グローバル生産体制を構築した多国籍企業がこれまで通りの高収益を上げられる環境が劇的に変わる可能性が出ていることだ。こうしたリスク要因を株価はまったく織り込んでいないため、何かのきっかけで2月下旬に見られたような株価急落に伴う円キャリー取引の巻き戻しの動きが再燃してもおかしくないだろう。

 2月下旬にそうしたことが起こる以前には、同月9~10日のドイツ・エッセンでの先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でヘッジファンド規制が話し合われたことや、その後も日銀が22日に利上げに動いていたことが重なり、ヘッジファンドがキャリー取引の解消を進めやすい環境がもたらされていた。そうした意味では、再び円キャリー取引の巻き戻しの動きが起こるかどうかを考えるにあたり、日銀が追加利上げに動いた後が要注意となりそうであり、また国際会議については今月18~19日の主要8カ国(G8)財務相会合でどのようなことが議題となるか、また声明文の内容がどのようなものになるかが注目されそうだ。もし再びキャリー取引の巻き戻しが生じると、05年1月から始まった上昇傾向が今年1月29日で天井を打った可能性が高まるため、前回では個人投資家のドル買いから1ドル=115円台で下げ止まったものの、今度はそこでは下げ止まらないことも考えられる。その場合、個人投資家の投げが出ることで、昨年4月21~22日のワシントンでのG7会議を機に急落した際には5月17日に109円割れまで下げたが、そこまで一気に下げてもおかしくないだろう。(5月8日、談)

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2007年05月10日 08:52に投稿されたエントリーのページです。

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