6月28日
板垣哲史
実際にトレードをするにあたり、最も基本として重視するのはチャートである。チャートは過去の値動きの推移を見るだけでなく、トレードをするための判断材料の多くを提供してくれる。相場分析の手法としてはファンダメンタルズ分析とテクニカル分析に大別されるが、決してファンダメンタルズ分析が重要ではないとはいえないものの、プロのトレーダーのように日々トレーディングに携わっている人ほどチャートを活用したテクニカル分析を重用する。
なぜなら、チャートにはマーケットの「心理」そのものが表れているからであり、その心理を如何に推論するかが勝利へのカギを握るからだ。チャートを見るということは、いわばマーケットの心理状態を把握することにほかならない。かつての時代からチャート(罫線)を見ている人もいたとはいえ、多くの相場師と呼ばれる人たちは自分の記憶力に基づいて、あの時はどう動いたから今回もおそらく同じパターンが当てはまるだろうといった姿勢で臨むことが多かった。なぜなら当時はさほど正確な公表データが存在せず、いわば自らの経験則に基づいて自分のポジションを建てていたからだ。近年になり、チャートを用いたテクニカル分析が発達してくるにつれて、チャートを活用したトレーディング手法が主流となっている。パソコンが一般的に普及したことで、単にロウソク足で値動きだけを追ったチャートだけでなく、指数の計算がトレンド系だけでなくその算出方法がより複雑なオシレーター系まで難なくできるようになったことで、よけいにそうした風潮が一般的になっているのが現状だ。
もっとも、自らの経験則と信念や“直感”だけを頼りにするトレーディング手法が全く見られなくなったというわけではない。実際にはチャート分析を基にしつつも、自らがこれまで経験として築いてきた“技術”をも活かした手法でトレーディングの判断材料にしている人たちも少なくない。例えば個人的には、「ダブル・トップ(ボトム)」はあっても「トリプル・トップ(ボトム)」はないというのがこれまでの経験則から得た信念としてもっている。つまり、相場が天井を打つ時には(底入れする時も同じだが)、1回天井を打った後にいったん下押してもう一度上昇した時に、前回の高値付近で止まり、その後の下げで以前の押し目の水準を下回ってしまうと「ダブル・トップ(ボトム)」を形成することになり、そこで天井打ち(底入れ)が確認されることになる。ところが、2回目の下押し局面で前回の押し目を下回らずにまた上昇してしまうと、これまでの個人的な経験則ではそこはあくまでも中段の保合いに過ぎず、天井を打たないで過去2回の高値を超えてさらに上昇していくことが多いと信じている。これは、個人的にこれまで培ってきた経験則からいえることである。
そもそも、チャート分析とは過去の動きの法則から未来を占うことであり、いわば“昔風”の相場師が自らの経験則に基づいてトレーディングを行っていたものの延長戦上にあるともいえるが、その未来の様相というのは過去の動きに必ず投影されていることが前提となっている。いわゆる「歴史は繰り返す」という諺があるが、それを相場分析にも適用しているに過ぎない。マクロ経済分析における景気循環理論と同じことであり、それを戦後、1960年代までの数理経済学が全盛だった米系ケインズ経済学者からはそうした理論は非科学的だとして論駁されているのは、どうしても循環的に繰り返す法則のようなものを科学的に証明するのが困難だからである。そうした景気循環理論を実際にトレーディングに応用したのがエリオットの波動理論であり、「宇宙の法則」などと“神秘的”な言葉が使われつつも、その本質は過去の動きを絶対的な法則としてその決められたパターンに従って未来の値動きを予測するものに過ぎない。ただ、これから起こるであろう動きが過去の動きからそれなりの影響を受けるのは事実だとしても、完全に過去の動きをそのまま踏襲するわけではないことは“自明の理”である。そこにテクニカル分析の限界があり、それだけに頼っていては危険であるのはいうまでもないことだ。






