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勝てるトレーダーの思考法(2)―フアンダメンダル分析の役割と限界ー

7月27日
板垣哲史

 前回、テクニカルアナリシスの重要性と限界を述べてきたが、今回はファンダメンタルズ分析について述べたい。テクニカル分析は過去の動きを数値化して未来を予測する手法だが、ある程度は過去の動きから導き得た法則に従ってこれからも動くとしても、そこには過去と現在の環境、そして将来待ち受けている環境とでは異なっていたり、また異なることが見込まれる場合、過去の法則通りに動くとは限らないからだ。このため、その時々の経済・金融状況やそれに影響を及ぼす国際政治情勢を正確に認識し、それに相場がどのような影響を受けるかを分析しなければならないわけである。ただファンダメンタルズ分析で難しいのは、入手する情報に振り回されるのではなく、その情報が現時点でマーケットにどの程度浸透しているかを判断するのが難しいことだ。例えば為替のマーケットでは毎月最初の金曜日に発表される前月分の米国の雇用統計の内容が注目されることが多いが、同国の雇用環境が悪化しており、今度発表されるその指標も悪くなっていると多くのマーケット参加者が思えば、発表されるまでにそれだけ強いドル売り圧力が出ているはずである。実際に発表された数値が予想されている以上にさらに悪化していないとすでに織り込まれており、それ以上はドル安が進まないものだ。

 すなわち人間は、常に未来に備えようとして思考を張り巡らすため、前もって事態を予測し、先んじて行動する習性がある。マーケットに参加してトレーディングを行っている人たちも皆このような思考の人間であるため、参加者すべての人がそうした行動をとるからだ。しかも、人間には欲深いというもうひとつの特性があるため、先回りした行動をとるだけでなく、それが過熱してしまうと多くの人が理性的な判断ができなくなって“妄信”をしてしまい、“行き過ぎ”という現象が往々にして見られるものだ。いわゆる「オーバーシュート」と呼ばれる現象が必ず起こるものであり、買うべき事実が出てくると思われる時にはそれを織り込む形で買われていき、さらに必要以上に上昇してしまうことが多い。その最たるものが“バブル”と呼ばれる現象である。
 このバブルが生じる人間の群集心理とは、多くの人に心理学でいうところの「順応的態度」が備わっていることから起こる。私たちは付き合いのある人、仲の良い友人や知人から影響を受けているものであり、それにより同じような考え方や行動をとる傾向がある。 相場の世界でも同じことがあり、アナリストといわれるような人でさえ、仲間内で意見交換をしたり、お互いに執筆したリポートや経済・金融雑誌を読み合うため、同じような見解に集約されていく傾向がある。極端に強気派や弱気派で自らの地位を確立しているような人ならともかく、標準的なエコノミストの景気見通しや成長率見通しがあまり大差のないものとなるのもこのためである。このため、相場の世界でもマーケットが強気な環境に包まれている時には、アナリストのリポートやコメントも上昇期待の強いものとなりやすい。しかし、そうした強気な環境に包まれている時というのは、すでに相場にはそうした上がる材料を織り込んで上がりきっていることが多いのである。にもかかわらず、多くの人たちが理性的な判断ができずにさらに“狂乱”状態となるとバブル化してしまうわけだ。
 人間にはそうした習性があるために事実が出てくるまでにすでに相場には織り込まれているものであることから、もしバブル化するまで狂乱状態にならなければ、実際にそうした事実が出てくると上がるのではなく、逆に下がってしまうケースがよくあるものだ。相場の世界でよくいわれる「噂で買って事実で売る」といった格言はこれを見事に言い表している。相場の場況の文章を見ていると「材料出尽くし」といった言葉がよく使われているのもこうした現象を表したものだ。
 このように相場がオーバーシュートのような状態にある場合、上昇局面で過熱した状態にある時に買い足したり、下降局面で売り込んでしまうと“因果玉”を抱えることになってしまう。そうした相場が過熱した状態にある時には、周辺でトレーディングをしている人たちと逆の行動をしなければならないわけだ。相場の格言に「人の行く裏に道あり花の山」というものがある通りである。相場巧者と呼ばれる人は上昇局面では、ある程度の買いポジションを“種玉”として維持しながら、少玉押し目買いと利食い売りを繰り返しながらかなりの利益を手にしているものだが、そうした過熱状態にあるのを察知すれば、多くの人たち――それも通常はトレーディングに参加してこないような人たちが買い付いてくるのを横目に、すばやく種玉の買いポジションを利食っているはずである。
 ファンダメンタルズで与えられた材料についても、例えば米国の貿易赤字が史上最高になったといっても、よく考えればそれは2ヵ月前の話に過ぎない。少なくとも、現在起こっていることではないわけだ。もっとも、貿易収支というのはその流れができると数年単位で続くものであるため、発表後には相場が割と“素直”な動きをすることが多いが、景気指標にはそうした動きをしないことが多いことはよく押さえておく必要があるだろう。
 このため、実際にトレーディングを行う上である情報を入手した場合、その情報がマーケットにどの程度浸透しているかということを、直近のチャートの形状からよく分析し、的確に判断しなければならない。重要な景気指標というのは金曜日に発表されることが多いが、発表日が近づくにつれてその前週にはメディア機関から各アナリストやエコノミストの予想数値が事前に出ているため、マーケットは発表以前にそれを織り込んで動いている。前述したように標準的なアナリストやエコノミストの予想数値もおおむね同じレベルに集約される傾向があるだけに、よけいにマーケットにはそれが織り込まれやすくなる。そして発表される週にさしかかった段階で、それまで伝えられていた予測数値よりもさらに悪い内容となるのではないかといった思惑が強まると当然のことながら相場は下がりやすくなるが、発表日の前日の木曜日頃にはすでに売りポジションを持っていたトレーダーは利食いの買い戻しに入っているものであるため、発表直前までにやや戻していることが多いものだ。そして実際に金曜日に発表されてみると、それが本当に悪い内容であれば瞬間的に売り込まれるがそれで売り圧力は出し尽くしてしまい、それからは買われやすくなるものだ。実際の相場の動きは必ずしも以上述べてきたように動くわけではないが、マーケット心理というのは常に先のことを予測しながらそれを織り込んで動き、実際にそうした材料が出た場合にはよほど事前予想とは異なる“サプライズ”な内容でない限り、それほど目立った大きな動きをしないものである。
 

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2007年07月27日 11:49に投稿されたエントリーのページです。

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