ドル・円相場は米国でサブプライム問題の高まりによる信用収縮懸念から株安とともにドル安圧力が高まり、円キャリー取引の巻き戻しへの思惑も加わって下げ圧力が高まっている。住宅バブルが崩壊に向かっているなかで、低所得者層向けを対象としたサブプライム問題はいわばその“入り口”に過ぎず、これから他の分野に波及していく公算が高いことから、短期的にさらにドル安圧力が高まることで一段安となることもあり得なくはない。とはいえ、6月22日に1ドル=124円14銭で天井を打ったことで中長期的には下降傾向が始まっていると思われるものの、目先的にはこれまでの下げがきつかったこともあり、いったん下げ止まる可能性が高いのではないか。
というのは、ひとつには米国経済が1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率0.6%に沈んで以来、在庫調整の一巡から上向いており、短期的に生産活動が活発化していることが挙げられる。長期金利が10年国債利回りベースで6月12日には5.3%まで急上昇したものの、その後サブプライム問題が高まったことから再び4%台半ば近い水準まで急反落したことも、生産活動を下支えることになりそうだ。また、長期金利がさらに低下していけば日米金利差の観点から円高・ドル安が進む可能性もあるとはいえ、生産活動がこれ以上落ち込まなければ長期金利もさらに大きく下がるとは思えないため、金利差が3%前後の水準を維持する限り、短期的に一段と下げ圧力が強まることは考えにくいといえる。
さしあたり、ドル・円相場は7月27日に120円を割って以来、上値を119円台前半、下値を117円台とするレンジ内で推移しており、一気に下限を割れば3月5日の115円15銭まで下がる可能性が出てくる。とはいえ、目先下げ圧力がいったん弱まると見ているので、当面はレンジ内での推移となるか、一時的に上限を突破する場面も出てくるかもしれない。
とはいえ、米国経済は構造的に過剰債務を抱えた状態にあることから、景気が上向いて長期金利が上昇すれば、今回のサブプライム問題の高まりに見られるように必然的に景気が落ち込むのが避けられない。足元の株安が一服しても、ヘッジファンドの多くが年末に決算期を迎えるなかで、例年10~11月になると米金融市場が大きな動揺に見舞われやすいため、9月下旬以降になるとドル安リスクが再燃しておかしくない。
しかも、日銀はもとより金利機能の正常化を目指すうえで利上げを模索しているなかで、国際的に円安是正が求められていることから、追加利上げを実施しやすくなっている。現在、市場では利上げは足元の8月で行われた後、半年に1回のペースを維持するとして来年2月に実施されるのを織り込んでいるが、こうした状況を考えるとECB並みに3ヵ月に1回にペースが速まることで、11月に行われる公算が高まってくるのではないか。それに先立つ10月にはワシントンで先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が開催されるので、そこで円安是正に向けた国際公約ができれば利上げを実施しやすくなるだろう。市場がそれを織り込んでいくにつれて長期金利が上昇していき、それにより日米金利差が縮小することで円高・ドル安に向かいやすくなるのではないか。しかも、今年2月に利上げが行われた際には、27日に上海市場初で世界同時株安現象に見舞われたが、そうした信用収縮懸念が再燃することで米株価急落からドル安リスクが高まっておかしくないだろう。
また、米国では議会が保護主義的な圧力を強めており、これまで人民元が緩やかにしか切り上がっていないなかで、ポールソン財務長官の対中交渉に対して批判が高まっている。長官の更迭を求める声も強まっているようだが、もしそれが実現すると通商派の長官に交替することで、人民元だけでなく大幅に円高誘導が行われるリスクが高まることも指摘する必要があるだろう。(8月6日、談)






