8月30日
外国為替市場では米サブプライム問題の高まりによる信用収縮懸念から、世界的に株価が急落したのに伴ってドルや円が上昇したが、とくに円キャリー取引の巻き戻しが進んだことや日本の個人投資家の損切りが重なったことで円相場が急上昇した。8月に入ってからドル・円相場は上値を1ドル=119円台、下値を117円台とするレンジ内で推移していたが、15日にこのレンジ下限を割り込むと大きく売り込まれ、17日の東京市場では111円60銭まで急落した。
もとより、個人的にはクレジット市場が非常に危険な状態にあることをかねてから指摘していたので、今回の信用収縮危機はついに来るべきものが来たといった印象を受けている。さしあたり、今回の危機はECBやFRBが緊急に連日にわたり流動性供給策を実施したのが奏功したことで遠のいたようだ。とはいえ、クレジット市場での損失の規模が明らかでないため、危機的な状況が完全に収束したとはいえないだろう。ヘッジファンドは10~11月に決算を迎えるところが多いが、それに先立つ9月後半から10月にかけて解約が相次ぐことで、信用リスク不安が再燃しておかしくない。
また、今回のサブプライム問題自体はローンの支払いが滞っている延滞率を1割と見ても、焦げ付いているのはせいぜい1,000億ドルに過ぎないといった試算が出ているように、それほど大きな規模とはいえない。とはいえ、これから返済能力のない債権を処理していく過程で格付けが大幅に引き下げられる金融機関が出てきてもおかしくないので、そうした事例が出てくると再び市場心理が悪化する恐れがあるだろう。それに加え、今回の信用収縮懸念から株価が急落したことで実体経済にも悪影響が及んだことが懸念されるが、その指標が9月から10月にかけて相次いで発表されるので、その内容を受けて市場が動揺することもあり得る。例年、秋になると米金融市場が動揺することが多いが、今年もその可能性が大きいと見ている。
しかも、今回の危機では株価が急落したが、その下げ方が米国株に比べて、銀行株に牽引されて日本株がそれ以上に落ち込んだことが注目される。いかにそれまで外国人投資家がデフレ脱却期待から日本株を大きく買い上げていたかを物語るものだが、本来的には米国株がより大きく下げておかしくないはずだ。それだけに、今秋に信用収縮懸念が再燃する際には米国の株価の下げがきつくなることで、それだけ外国為替市場ではドル安圧力が強まるのではないか。またそれにより、今回ではFRBは緊急に市場に短期資金を供給し、さらには公定歩合を0.5%引き下げることで対処したが、この次に危機を迎える局面ではFFレートを引き下げざるを得なくなり、それによりドルはさらに売られやすくなっておかしくないだろう。
さしあたり、ドル・円相場は117円台のレンジ下限を割り込んで急落したので、この水準は強力な上値抵抗になっていると考えられる。6月22日の124円15銭から直近の111円60銭の安値までの半値戻しが117円80~90銭であるところを見ても、しばらくこの水準を超える公算は低そうだ。他方、下値については、再び下げ圧力が強まると111円台半ばの安値を割り込む可能性が高く、昨年4月21~22日の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議を機に急落した際には5月17日に一時109円を割ったが、この水準がひとつの節目になりそうだ。ただ、危機が再燃した際に、住宅バブル崩壊の“波”が今回のサブプライム問題から投機目的が多い「オルトA」に波及すると非常に深刻な事態が誘発されかねない。この分野はヘッジファンド向けに投機目的で融資されているものが多いため、直接的に多くのヘッジファンドを破綻させることになり、またレバレッジも効いているので他の多くの金融機関に連鎖的に大きな悪影響をもたらしかねないからである。この問題に波及するようだと109円割れの節目をも下回ってしまい、一気に05年1月の101円台の安値まで急落する可能性もなくはないのではないか。(8月27日、談)






