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マーケット予測・再考 ~ 唐津一著『かけひきの科学』を読んで

2007年9月6日
立正大学経済学部 教授 林 康史

 予測とは、仮説を立てて、取捨選択するということである。
その手順は、「情報収集→分析(認識)→仮説・推理→評価(結論)」であり、その結論が予測ということになる。

 唐津一著『かけひきの科学』に、簡単な仮説の例として、天気予報の話が載っている。原則を抜書きすると以下のようになる。
 「明日の天気は今日と同じ」
 「明日の天気は昨日・今日のトレンドを継続」
 「サイクルが維持される」
 「相関の利用」

 「明日の天気は今日と同じ」
東京では「明日」の6割近くが「今日」と同じ天気だという。
 「明日の天気は昨日・今日のトレンドを継続」
 東京では、明日の天気が昨日・今日のトレンドを継続する可能性は、7割ほどという。
 株式市場でも「二日上がったら買い」という。
 「サイクルがある」
たとえば、冬場の天気について、三寒四温という言葉がある。三日寒い日が続いた後に四日温暖な日が続くということだ。

 このあたりになると、予測技法として利用できない人が意外に多い。マーケットにサイクルがあることを前提にしている人は多くはない。
 また、たとえば、週末の天気は先週と同じということを感じることがある。それはサイクルが1週間と重なったということだ。
 実は、年、四季、月、週、日という時間の単位のうち、自然の摂理と離れているのは、週である。人為の色が濃いのである。つまり、自然界以上に、社会的にサイクルが存在するということは当然かもしれない。アノマリーといわれることが多いが、相場でも曜日毎に癖のようなものがある。
 もちろん、もっと長いサイクルもある。長く大きなサイクルの部分を切り取ると、トレンドにみえる。
 波動は、振幅と周期がさまざまなサイクルが合成されたものだ。

「相関の利用」
 関東の天気は、西の方からやってくる。つまり、天気が崩れたり、よくなったりするのは、西の天気が先行していると考えると予測しやすい。これは、相関関係を読むということになる。
 たとえば、米国株が下落したり、ドル円が下落すれば、日本株が下落したりする。もちろん、相関は一方向でもないし、単純ではないが、明らかに相関があると思われることも多い。

 マーケットで言えば、テクニカル分析は「明日の天気は今日と同じ」「明日の天気は昨日・今日のトレンドを継続」という見方が濃厚であり、ファンダメンタル分析では「相関の利用」が重んじられる。
 実は、「サイクルが維持される」というのは、落とし穴である。
テクニカル・アナリストも、ファンダメンタリストも苦手な見方である。言葉を変えると、テクニカルもファンダメンタルもトレンド転換に弱いのである。
8月の相場は、「上がったものは下がる、下がったものは上がる」を改めて思い知らされるマーケットだった。

 サイクルを読むのが難しいとすれば、予測の補完として、方針を固めておくということが考えられる。相場では、これは運用ルールに相当する。心理的なバイアスから逃れるためにも、自分の行動指針は事前にわかっていなければならない。

 「たいていの人間は本能的に臆病であり、危険を過大に見積もることになる。(略)不確実だからといって、そればかりに気をとられていてはだめである。これに対して、はじめからある心構えをしておくことこそ重要である。この心構えをすることは、ひとつの方針を持つことであり、これが戦略である」(クラウゼヴィッツ『戦争論』)

 唐津一著『かけひきの科学』の紹介になってしまったが、8月の相場でうまくいかなかった人は、予測と実践について再考することが必要かもしれない。
 うまくいかないのは、分析が不足したからだと考えた人が多いかもしれないが、予測の精度を10倍にするにはデータを100倍集めて分析する必要がある。分析のみで補うのは大変である。

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2007年09月06日 09:19に投稿されたエントリーのページです。

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