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勝てるトレーダーの思考法(4)   ~人は如何なる心理で損失を増大させてしまうのか~

9月28日
板垣哲史

 さて、これまではトレーディングをしていくにあたり、その心構えを中心に述べてきたが、次に実際にトレーディングをしている際に陥りやすい、精神的呪縛について語ろう。 この呪縛は相場で成功するのだといった気構えが強ければ強いほど、現実に起こっていることが見えなくなる現象である。
 それを心理学では「認知的不協和」という専門用語で分析されている心理変化現象である。この理論は、人間には自分が犯した行為が現実の世界に適合しなくなった際に、その行為を自身に都合良く解釈することで、現実の世界で実際に起こったことを正確に認識できなくなってしまう状態に陥ることを指したものである。

 この理論の説明として最もわかりやすい例として「吊り橋の法則」というものがある。ある美人の女性が、好きでも嫌いでもない男性と二人で断崖絶壁に架けられた細い小さな吊り橋を渡らなければならなくなったとしよう。そうした吊り橋に、たまたま二人だけで足を踏み入れたのだが、中央付近にさしかかったところで強風が吹いて橋がかなり揺れてしまったとき、その女性は恐怖心から傍にいた好きでも嫌いでもない男性に思わずしがみついてしまったとする。そうすると、女性の心のなかに「不協和」という心理状態が生み出されるのだ。好きでもないという心理と、しがみついたという自らの行動に対する恥ずかしい心理状態の狭間で“葛藤”が生じるのである。
 彼女としては、心のなかの葛藤を何とかして打ち消したいのだが、時間を引き戻すことなどできるわけがない。そこで、彼女は自らの“心の持ち方”を変えることで心の葛藤を打ち消そうとするわけである。すなわち、その男性を好きになることで、自らがその男性にしがみついたという行為を正当化して『協和』できる思考に切り替えるわけである。これにより、その男性は他の多くの男性にとって“渇望の的”だった人気者の女性を自分に気をひくような状態にするチャンスを得たのである。男女交際の初期に人気のあるスリリングな遊園地の施設にはこうした心理の秘密があると言うわけだ。
 このように、自分のとった行動やとらざるを得なかった行動に対して、その結果、自分自身の心のなかに不快な感情や損をしたといった気持ちに対して、人間はその起きたこと自体をプラスに解釈することで心の協和を図ろうとする習性がある。人間の行動のなかにはつねに日常的にそうした心理状態が働いているという事実をトレーダーの人たちはよく認識する必要がある。学問的に定義付けをすれば、さまざまな対象に対して人間が持っている知識や信念、意見というものを心理学では「認知的要素」と呼ぶが、自分自身を取り巻く環境を含めた自分自身に対する認知的要素と自分のとった行動との間に矛盾や対立があった場合、その状況を「認知的不協和の状態」という。そうした状況に陥った場合、人間というのは極めて不快な緊張をもたらすため、何とか不協和に陥っている心の状態を解消させ、心のなかに矛盾や対立のない状態を回復しようとするために、己の行為を正当化する理由を考え出さざるを得ないというのがこの認知的不協和理論の基本的な考え方である。
 相場に携わっているトレーダーは、自分自身が相場に関わったと同時に、自分自身に今述べたような心理的変化が起きるリスクを常に抱えている。この認知的不協和理論というものを実際に一言でいえば「認知的不協和低減の法則」が働くということだ。
 儲かるはずのポジションが、思いがけずどんどん損失を膨らましていく事態が起きた時に、人間の心理はそれを何とか正当化するための解釈を考え出し、不安を減らそうと努力するということを自動的に行っていく性質がある。 すなわち、今後の行方を占うために情報分析をしていった時に、上がる要素と下がる要素のなかで、自分のポジションに有利な上がる要素についての情報が頭のなかで強く意識されてしまい、下がるという情報は抹殺される傾向が出てくる。そして、『もうすぐ戻る。もうすぐ止まって反転する』という自分の都合を中心に相場観をゆがめていき、大底で投売りをするまで追い込まれ、最悪の事態を招く。本来、現実的に相場が下がったということはそれなりに原因があるはずなのだが、その原因よりも今後また相場が上がり直すであろうという要因を情報のなかに必死に見つけようとするわけである。すなわち、自分が判断して儲かると確信して取ったポジションを正当化しようと必死になりすぎて、自分の相場観に主観的な“色”が付いてしまっていることを自覚できないわけだ。
 ポジションを取った後は、認知的不協和という状態が自身の心のなかに働いているという事実を認識していないと、ますます歪んだ認識に陥って行く事を忘れてはならない。

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2007年09月28日 15:29に投稿されたエントリーのページです。

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