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斎藤満――東海東京証券 理事 チーフエコノミスト

 ドル・円相場は5日に発表された9月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比11万人増加となり、7、8月も上向き改訂されたことから底堅く推移している。当面はFRBが利下げに動くとの期待が後退しつつあることから引き続き強含み傾向を継続しても、せいぜい1ドル=120円程度までで、おそらく、そこまで到達することもないのではないか。・・・

 2月下旬から3月上旬にかけて上海市場発で世界同時株安が起こり、それから小康状態を経て8月半ばにはサブプライム問題から信用収縮懸念に見舞われた。その後、8月分の雇用統計では雇用者数が前月比マイナスの伸びになるなど(その後プラスの伸びに修正)実体経済にも悪影響が及んでいるとの見方が強まり、実際、FRBは0.5%の利下げに踏み切ったが、9月分の雇用統計の発表を機に景気悪化の懸念が薄れている。とはいえ、米国での住宅バブル崩壊の動きはまだ始まったばかりの段階にあるため、これからさらに金融・資本市場が動揺する局面が出てこざるを得ないと思われる。
 米国では住宅価格が足元では下がり始めてきたところであり、住宅の売れ残り在庫が増え、その処分売りをする過程で、これから本格的に下げていく公算が高い。そうなると、住宅ローンの借り換えで得られた余剰分の資金を消費に回したり、返済を加速したりすることができなくなる。むしろ、住宅価格がローンを設定した時点の価格より低下することで住宅処分によるローン返済の道が閉ざされ、返済の焦げ付きが増えてしまい、金融機関の収益にも悪影響が及ぶだろう。資産デフレが進むと、これから長期にわたり個人消費が低迷するだけでなく、金融システムが脆弱化することで、折にふれて流動性危機や信用収縮懸念が再燃することが考えられる。
 それに加え、7月10日にS&Pがサブプライム担保債券120億ドル分の格下げを発表したことが8月半ばの信用収縮危機に至る発端となったものだが、こうした格付け会社の格下げが今後も起こりそうなことも懸念される。証券化商品に対するリスク評価が甘すぎたといった批判が出ているなかで、欧米では政策当局から評価の基準を厳しくするように圧力が強まっており、格下げの動きが現実味を増してくるにつれて金融・資本市場が動揺しやすくなってもおかしくない。
 こうしたことを考えると、足元では悲観的な見方が緩和されていることで利下げ観測がやや遠のいているとはいえ、再びそうした観測が強まってくるだろう。それによりドル安が進みやすくなるだけでなく、流動性危機や信用収縮懸念が再燃するとドル急落が再び到来する局面も出てくるのではないか。
 歴史的な観点から見ても、資産としての裏づけのないドル紙幣に対するクレディビリティが喪失しつつあることが指摘できる。米国は1960年代に製造業がピークを打った後、金融業で優位性を構築して90年代にはITブームによる繁栄を現出した。それが00年前半にピークを打つと、ブッシュ政権が政治・外交政策面で一国覇権主義を推進することで景気が落ち込むのを防いできたが、それによりかえって世界的に反発を強める結果となり、非居住者がドル建て資産をユーロ建てなど他の資産にシフトする動きを強めている。そこに中期的に住宅バブル崩壊の動きが加わることで、外国為替市場ではかなりドル安圧力が強まりやすくなると思われる。
 その一方で、これまでは国内個人投資家が積極的に外債投資や為替証拠金取引を行ってきたことが円安圧力をもたらしていたことが指摘されているが、日本の家計の貯蓄が700兆円もの規模を誇ることを考えると、今後も外貨買いの動きは根強い状態が続きそうだ。ただし、ドル安観測が支配的になっていくことで、その対象はユーロや英ポンドといった米国以外の先進国通貨や豪ドルのような国際コモディティ市況高騰の恩恵を受けている資源国通貨に向かっていき、米ドルは忌避されていくだろう。それにより、対円でもドル安が進みやすくなっていき、来年中に1ドル=100円を割り込む場面があっておかしくないのではないか。(10月9日、談)

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2007年10月11日 09:42に投稿されたエントリーのページです。

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