ドル・円相場は10月半ばから1ドル=114円台を中心に動意薄商状を続けている。保合いを上放れて上昇していくには10月15日の117円94銭を超える必要があるが、米国では住宅バブルが崩壊に向かっているなかで、足元でも相次いで米系大手金融機関がサブプライム関連の損失が膨らんで厳しい状況に追い込まれえているのを見ると、とてもそうしたことが実現するとは思えない。
その一方で、31日に発表された7-9月期の米実質GDP成長率(速報値)が前期比年率3.9%とかなり高成長となったことで116円近くまで上昇したものの、すぐに上値を抑えられて反落している。さらに、2日には10月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比16万6,000人と良好な内容となったことで上伸しても瞬間的なもので終わるあたり、上値の重さが目に付く状況だ。
そもそも、米国経済は住宅部門が大きく落ち込んでいるだけでなく、最近では消費関連をはじめ多くの経済指標がかなり低調なものが目に付いており、8月半ばにサブプライム問題から信用収縮危機が極度に高まって以来、確実に実体経済が悪化しているのがうかがわれる。にもかかわらず、7-9月期の実質GDP成長率が同4%近い成長率になったのを額面どおりに受け取るわけにはいかないのはいうまでもない。そもそも、今回のGDP統計ではデフレーターがわずか同0.8%とかなり低い伸びになったことが、実質成長率を大きく嵩上げする結果をもたらした。ところが、FRB関係者の多くがインフレ懸念を指摘していることを考えるとあまりに非現実的であり、おそらく、これから改定値が発表されるにつれてデフレーターが引き上げられていくことで成長率は下方修正されていくのではないか。10-12月期については同2%程度の成長率を見込む向きが多いようだが、最近の指標の落ち込みを考えると、個人的には同1%を下回ってもおかしくないような気がする。
ドル相場がユーロや高金利国通貨に対して下げ続けているにもかかわらず、対円では下げていないのは、以前に比べると小規模化しているとはいえ、個人投資家の外貨買いが根強く出ていることもその一因だ。ところが、最近ではその買いコストが114円台に集中している傾向が認められるため、現状からわずかに下振れするだけで一気に投げから急落することもあり得るだろう。直近のレンジ下限である22日の113円25銭の安値を下回ると、8月17日に信用収縮懸念から急落した際の111円60銭で下げ止まるとは思えず、昨年5月17日の108円97銭が当面の下値のメドになるのではないか。
ドル・円相場はレンジ内で強含む年には4-6月期に年間高値をつけるのに対し、軟化する年は年末から年初にかけて戻り天井を打ち、そこが年間を通じた高値となってそれ以降は下げ続ける習性がある。今回もそうした傾向を踏襲するとすれば、年内に109円割れまで下げてから修正高となり、2月以降には再び下げていく公算が高い。おりしも、このころには米大統領選挙の予備選挙で最大の“ヤマ場”であるスーパー・チューズデーを迎えるだけに、選挙戦を圧倒的に有利に進めている民主党の各候補者が通商問題を重視する発言を繰り返すことで、人民元の切り上げとともに円高圧力が強まることになるかもしれない。(11月6日、談)






