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嶌峰義清――第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

 外国為替市場では米サブプライム問題から格付け機関が証券化商品に対する大幅な格下げに動いていることで、米大手金融機関が相次いで大幅な損失計上を余儀なくされていることからドル安圧力が高まっており、ドル・円相場も11月26日には1ドル=107円19銭まで下落した。しかし、翌27日の東京時間でアブダビ投資庁が世界最大金融機関の米シティ・グループに75億ドルもの資本拠出に踏み切ったことから、株価の反発とともにドル・円相場も戻していき、目先109円台のギャップで上値を抑えられている。・・・

 目先的にはドル安圧力が減退している。米金融機関の損失計上の動きについては、今後も格付け機関から格下げに動くことが予定されているとはいえ、既格下げ分についてはすでに計上の動きががおおむね一巡している。また、サブプライム問題が実体経済にも波及するリスクが高まったことでFRBが断続的に利下げに動くとの観測が強まっていたが、これまで一本調子で長期金利が低下したことで、FFレートがかなり引き下げられていくのを織り込んでいると思われる。さらに、米政府としてはクリスマス商戦を乗り切るためにガソリン高や暖房油高につながる原油価格のさらなる高騰を抑えたいところだろうが、産油国側としてもドル安が進むなかで増産に動くことだけは回避したいはずであるため、双方の間で原油価格の安定化とともにドル相場も安定させるといった取り決めが水面下で成立しやすいのではないか。アブダビ投資庁の資本参加の発表も、こうした事情を勘案したうえでその背景を読むべきだろう。いずれにせよ、目先的には下げ圧力が一巡している可能性が高くさらに下落していくとは見ていないが、上値も重く、109円台の小さなギャップを埋めても113円台の大きなギャップを埋める可能性はほとんどないと考えている。
 年明け以降になるとドルに対するネガティブな要因が控えているため、再び下げ圧力が強まっておかしくない。まず格付け機関が年明けに証券化商品のさらなる格下げに動くと思われ、それにより米大手金融機関の間で損失計上を強いられるケースが出てくる可能性が高い。またサブプライム問題にしても、この低所得者層向けのローンは06年前半に最も多く設定されているが、2年間もの優遇金利が適用される期間を経た08年前半には支払い金利の大幅な上昇とともに大規模に焦げ付きリスクが表面化してしまい、延滞率が急上昇することが危惧されている。それにより金融・資本市場の動揺が再燃するリスクが高まることで、FRBも流動性供給を続けざるを得ないだろう。それに加え、FRBとしては確実にインフレ・リスクが徐々に増しているなかで、実体経済の悪化を防ぐために利下げを積極的に推進していくか、それを多少犠牲にしてでもインフレ抑制を重視するかの難しい選択を迫られることになる。利下げが推進されれば直接的にドル安要因になるだけでなく、インフレ顕在化の兆しが出てくれば長期金利の上昇からいったんはドル高要因になっても、それにより優良顧客層向けのプライム・ローンまで焦げ付きリスクが表面化することで住宅バブルが完全に崩壊することになりかねない。どちらに転んでもドルには大きな圧迫要因になることが見込まれる。
 こうしたことから、ドル・円相場は年内は下げ圧力が一服しても年明け以降、本来の下降波動に回帰していき、1-3月期にはサブプライム問題が再燃することで、99年11月・00年1月や05年1月の101円台の安値に向けて下げていくのではないか。大統領選挙で民主党候補者が圧倒的に優勢な状況だが、同党は労働組合を支持基盤としていることからただでさえ保護主義的な姿勢を強める傾向があるだけでなく、米国経済は外需でしか成長を推進できなくなっているだけに、なおさらドル安圧力が強まっておかしくない。さすがにこの安値は相当大きな下値支持だと思われるだけにいったん下げ止まって4-6月期には反発しても、秋になると米金融市場が動揺することが多いだけに、住宅バブル崩壊が次の局面に移行することで再び下げやすくなり、08年中に95年4月19日の円相場史上最高値79円75銭を目指す展開になっておかしくないと見ている。08年8月には北京五輪が開催されるが、この大きなイベントが終わると安定的な経済成長の持続を計るという大義名分が失われることで人民元が大幅に切り上げられる可能性があり、それによりさらに円高圧力が強まっておかしくないだろう。(11月28日、談)

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2007年11月29日 09:05に投稿されたエントリーのページです。

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