2008年01月03日
立正大学経済学部 教授 林 康史
「年間の動き」について述べておきたい。今年が上昇する年か下落する年か(平均1~5のいずれのパターンの年なのか)を考え、過去の年間のレンジから今年の年間のレンジを推定する際の参考とするためである。
この表を使って予測しようというのではない。自分の相場観に従ってレンジを想定するために用いるのである。つまり、自分の相場観と自分の予測の整合性の確認に使うものである。「今年は上昇だろう」と考えつつ、「平均2程度の上昇」も予測していないというのであれば、自分の相場観と予測レートは矛盾しているということになるわけだ。自分の相場観のチェックに使えるばかりでなく、著名なマーケット・アナリストの年初のコメントと予想水準に矛盾がないかどうかのチェックにも使える。
認知心理学や行動経済学の立場から考えれば、人というのは、現状に係留(アンカリング)されがちであるということだ(林康史監訳『投資の心理学』東洋経済新報社などを参照ください。ちなみに、現在、ダイヤモンド社のウェブに『マーケットで成功するための投資の心理学』を3ヶ月間、12回にわたって連載しています。読んでいただければ幸甚である。http://diamond.jp/series/hayashi/10005/)。
実は、相場予測も同じで、人は、足元の水準に非常に影響を受けるものである。「今年のレンジは?」と聞かれると、“現行水準±小幅なノリシロ”程度で答えているのである。ここでのハイローの話は、テクニカル分析とも呼べないほどの、プリミティブなものである(テクニカル分析“以前”と私は呼んでいる)が、行動経済学の視点から言えば、冷静さを取り戻させてくれるという効果が期待できるのである。
表は1977年以来の年間のドル円相場の記録である。
表 ドル・円相場の年間高値・安値・中心相場(東京~N.Y.ベース) 2008年1月 (c)Yasushi Hayashi
西 暦 寄 付 高 値 高値/寄付(%) 安 値 安値/寄付(%) 引 値 東京市場 中心相場 (年間平均) 上昇・下落(対前年比)
1977年 292.80 293.50 0.2 238.00 -18.7 240 268.51 -
2004 107.40 114.88 7.0 101.83 -5.2 102.63 108.17 -
2005 102.71 121.40 18.2 101.67 -1.0 118.01 110.21 +
2006 117.88 119.86 1.7 109 -7.5 119.05 116.31 +
2007 119 124.13 4.3 107.19 -9.9 111.71 117.77 +
2008 111.46
平均1 121.92 9.4 100.73 -9.6
平均2 125.67 12.8 103.35 -7.3
平均3 118.41 6.2 98.28 -11.8
平均4 129.41 16.1 108.72 -2.5
平均5 114.81 3.0 93.58 -16.0
注1 1977年寄付は1月4日の高値。1985年以前の東京市場中心相場は月中平均12ヵ月分を
平均したもの
(2001年11月以降は週平均の平均値を使用)。
注2 平均1は過去31年間の平均。平均2は中心相場が前年比+だった15年の平均。
注2 平均3は中心相場が前年比-だった16年の平均。
注2 平均4は中心相場が前年比+で、かつ、年間の方向がドル高だった9年の平均。
注2 平均5は中心相場が前年比-で、かつ、年間の方向がドル安だった10年の平均。
注3 平均1.2.3.4.5の欄の高値・安値は、過去の平均値から算出した2008年の想定高値、安値。
注4 2007年の高値安値は、124円13銭(6月22日)、107円19銭(11月26日)。
2007年は、119円に始まり、ドルの高値124.13円、安値107.19円であった。去年の表で振り返ると、ドルの高値は、ドルが弱い年の平均(平均3)ドルが非常に弱い年の平均(平均5)の間で、ドルの安値は、平均的な年の平均(平均1)過去の平均程度だったことがわかる。つまり、平均的な年(平均1)というよりも、そのレンジの中で、さらに、動きの小さな年だったということである。
2007年の動きを比率で計算すると、対寄付比で、ドルの高値+4.3%、安値-9.9%となる。過去31 年の平均では、ドルの高値+9.4%、安値-9.6%となる。
さて、今年の寄付は、正確なところはまだ確認していないが、111.46円であった。そのレートを使って今年のレンジを想定してみよう。
★2008年も過去の平均的な年と同じ程度に動くと考えれば、ドルの高値+9.4%・安値-9.6%それぞれに111.46円を掛けて、ドルの高値121.92円、安値100.73円が計算される(平均1)。
★2008年がドル上昇の年だと予想するなら、平均2の欄の比率を使って計算すれば、ドルの高値125.67円、安値103.35円が計算される(平均2)。
★2008年がドル下落の年だと予想するなら、平均3の欄の比率を使って計算すれば、ドルの高値118.41円、安値98.28円が計算される(平均3)。
★2008年が強烈なドル上昇の年だと予想するなら、平均4の欄の比率を使って計算し、ドルの高値129.41円、安値108.72円が計算される(平均4)。
★2008年が強烈なドル下落の年だと予想するなら、平均5の欄の比率を使って計算し、ドルの高値114.81円、安値93.58円が計算される(平均5)。
今年はドル高だと予測するのならば、平均2程度のレンジは見ておかないといけないし、ドル安だと予測するのならば、平均3程度のレンジは見ておかないといけないということになる。
上記は予測というより、自分の相場観と自分の予測の整合性の確認に使うことができる。つまり、「今年はドル高だろう」と考えつつ、「高値は120円台は難しい」と考えているのであれば、自分の相場観と予測レートは若干、矛盾しているということになる。
以上






