02月28日
板垣哲史
食の安全確保、投資の安全確保については、古来から、何度も危うさが指摘されているが、最も大事なことは、検査及び評価機関が万全であることである。
日本人はこうした問題にデリケートで、食に関しては、このところ連日のように報道がされているが、流通経路が国際的になり、原因を生んだと思われる犯人探しに躍起であるが、この場合は、あまり中国を責めても問題の解決には繋がるとは思えない。
今回のケースでは、日本の商社が、現地の食品会社と提携して現地の安い労働コストをフルに利用して庶民が喜ぶ値段で日本国内に流通させることに成功した事例だった。とにかく20個入りの餃子が、スーパーの特売で、120円で売ってるとなれば、格差社会で苦しむわれわれにとってまずいなどといっていられない価格である。
事件が公表された直後には、輸入商社の品質管理担当者による中国の天洋食品の工場への立ち入り検査が実施され、国内発注元企業の責任者も「現地での検査体制が甘かった」と反省の弁を述べていた。
しかし、製品の生産管理、製品検査といったプロの専門的知識が必要な現場仕事を、ビジネス第一の商社マンにやれといっても土台無理がある。
商社の主な役割は、海外の製造工場と国内流通業者の間に介在して、場合によっては、工場の設計から資材の運び込み、生産ラインの構築から船積みなど、輸入ビジネスの新しいラインを作り上げ、商談を取りまとめることにある。ところが、生産や検品に直接かかわる仕事は、不得意な分野であり、特に今回のケースのような食品関係では、出荷前の製品検査という最も重要な現場仕事を、日本の食品輸入業者であるJTが、現場仕事のプロでない輸入商社側に委ね、商社は事実上現地の食品生産会社に丸投げしていた結果のようである。すなわち検品業務を現地の食品生産会社に委ねてしまったこと自体に根本的な間違いであった。
安全がなによりも優先されるのが食品である。中国からの輸入が、生産に直接関与しない生産委託型が主流である以上、今より細やかな製品チェックを行うためには、現地の生産委託工場に製品検査のプロを「常駐派遣」して自前の検査管理監督体制をつらなければならないという当然の食品管理意識に欠けていたといえよう。
さらに、日本国政府は、海外からの食料品の輸入、特に冷凍などの加工食品については、大げさに言えば、食品テロをも想定した検査体制を確立すべきではなかろうか。
食の安全確保には、以上のような対策が、今後施されることになろうが、投資の安全性ということで考えれば、サブプライム問題を今後起こさない為には、どのような対策が立てられるのであろうか。サブプライム問題を食品にたとえれば、当初からメタミドホスのような毒性の高いものが含まれていたのでもなく、また北海道のミートホープの事件のように豚肉に牛の血液を混ぜて牛引き肉として売っていた偽造品でもない。米国の住宅ブームに乗って不動産が値上がりし、さらに上がると信じた住宅ローン会社や住宅建設会社が、破格の好条件で低所得者層に貸し付けたローンの返済がステップアップ金利に悲鳴を上げたことから表面化した問題である。
すなわち新鮮なうちは正常な食べ物であったが、熟れて美味しくなる前に、気が付いたら腐りかけていたような具合となってしまったことである。気が付くのが遅くなったのは、例によって証券化手法が発達し、さまざまな金融商品の中に紛れ込んでしまったのが原因である。
責任の多くの部分は、食品で言うと検品業務に当たる格付け会社がこのような腐りやすい不良食品が混入した証券に最上級のトリプリAを付けたことではなかろうか。ここで一般格付け会社のムーディーズ等やモノライン保険会社等の責任は重大なのだが、残念ながらかれらにその債務の全てを請け負うだけの資力は無い。結局、銀行が負うことになり、耐える力の無い金融機関は淘汰され、国税が使われることになりそうだ。今後反省点として格付け会社のあり方が問われることに成るのは間違いない。
今後の先行きの見通しについて悲観論で脅しても不快になるばかりだが、楽観論の観点から見ると、アメリカは年々人口が減少している日本と違い、ここ数年、自然増と移民流入で年々300万人もの人口が増加の勢いであることから、住宅需要は常に高く、去年のピークの住宅価格から30%引きで売り出されたロサンジェルス郊外の空き家となった銀行管理下となったサブプライム住宅には、購入希望者の見学バスツアーで連日にぎわってきているそうだ。金利が急激に下がっているのもかなりの追い風のようだ。まだまだ楽観は出来ないが、円高も一服してきているようだし、今年の秋には大底を脱していると願いたい。






