04月03日
立正大学経済学部 教授 林 康史
前回、パッシブかアクティブかという論争について書きましたが、それはちょうどビクター・キャントの「カクテル・エコノミクス」という本の翻訳をしていたためでもあります。この4月に、『カクテルパーティーの経済学 マクロで読み解く投資のヒント』というタイトルで、私の監訳でダイヤモンド社から出ます。
詳しくは、ぜひ、その本を紐解いてほしいと思いますが、その翻訳の作業をした感想を少しだけ記しておきたい。
ここ数年、ある大学で投資信託協会と投資顧問業協会の寄附講義「アセットマネジメント論」という半年の授業を担当していて、さまざまな運用現場の人をゲストに招いて話してもらっていたのですが、あるとき、ティーチングアシスタントをしている博士課程の大学院生が面白い感想を洩らしていました。「ゲストの先生たちは、すべて運用方法やスタイルが異なっているのに、自分のスタイルに自信満々なのですね」と言うのです。これは、自分の成功はよく覚えていて、失敗は忘却がちということもあるのでしょうが、成功への道は一つではないということでしょう。私にとっては当然だと思えることなのですが、彼には不思議なことのようでした。
単刀直入に「パッシブとアクティブのどちらが正しいのですか?」という質問を受けることもあります。
結論を述べますと、私の答えは簡単で、「いずれも間違っていない」というものです。世間では、どうも、パッシブとアクティブは相容れない理論のように考えているようですが、そうではありません。
キャントは、パッシブの評価が高いのは、時価総額加重平均と均等加重平均の計算上の差異も原因と指摘していますが、そもそも、パッシブは長期の投資期間を前提としているのに対し、アクティブは、そこまでの期間を前提にしていません。
私がよく行う喩え話は、前回も書きましたが、陸上競技です。長距離ランナーと短距離ランナーが、長距離走を行ったら、長距離ランナーが勝つに違いありませんが、短距離走であれば、結果は逆となります。パッシブという長距離ランナーとアクティブという短距離ランナーが、長期のパフォーマンスを競えば、パッシブが勝つのは自明です。亀が兎に勝つのは、長距離だからで、短距離だと兎が勝つでしょう。短期であればアクティブたらざるを得ないし、長期であれば、パッシブは負けない運用スタイルだと私は考えます。
しかし、「パッシブ、時々アクディブ」というのは、定義からは当然、アクティブということになるのでしょうが。
パッシブ運用に軸足を置きながらも、ここぞというときにはアクティブに運用するというキャントの発想は、陸上競技の喩えで言えば、短距離ランナーを何人も揃えて、長距離のレースをリレーでつないで勝ち抜こうというものです。
何が正しいかは、投資期間の取り方にもよりますし、その人の投資に対する考え方次第です。バフェットは「私の好きな保有期間は永久である」と述べていますが、ケインズは「“長期的に”という表現を現在の出来事について使うときには誤解を招きやすい。長期的には、われわれは皆死んでしまう。大嵐の最中に“しばらくすれば嵐が過ぎ去って海は穏やかになる”と言うことしかできないのならば、経済学者は、あまりにもお気楽で価値のない仕事をしていることになる」(『貨幣改革論』)と述べています。
あらゆる投資対象に永遠に投資したままでいたいというのは、考え方としてはわかりますけれども、下落の期間は買い持ちを持たず、むしろ売り持ちにしておくのが賢明なのは自明です。
そこで、論点は方向性が予測可能かどうか、また、その精度はどれほどか、ということになります。バリューとグロース、逆張りと順張り、パッシブとアクティブ、長期と短期、それぞれの局面で正解がありそうです。期間限定かもしれませんが、明らかに投資がうまい人は存在するし、そうであれば、「平均」をベースに置きながら、平均よりもよいパフォーマンスをあげることは不可能ではないと考えられます(平均で満足すること自体、キャントも言っているように、悪いことではありません。一段上を行くためには、それなりの努力が必要です。また、アセット見直しにかかるコストも小さくはありません)。
運用スタイルについて述べるとき、私は『不思議の国のアリス』の次のような会話を思い出します。
「教えて、どこに行けばいいの」とアリスが訊ねたとき、チシャ猫は「それはお前さんがどこに行きたいかによるね」と答えたのです。
あるいは、少なくとも、「パッシブ、アクティブの、どちらが正しいのですか?」という、答えの出ない設問は、おそらく問いの立て方自体が誤っているのではないでしょうか。
さて、『ジム・ロジャーズ 中国の時代』(仮題、共訳)も5月ごろに日本経済新聞出版社から出版される予定ですが、そう言えば、ジムもアクティブに、バリュー(割安)投資を行います。
ここで質問。海外投資を行うのはなぜなのでしょうか。
パッシブ運用の視点からすれば、分散投資ということになります。しかし、米国株が下がっているときには、理由も何もなくても日本株が下がりますから、なかなか分散は効きません。
では、アクティブ運用の立場からすれば、割安な、あるいは、成長しているものを探すためということになります。
この本もまた、投資についていろいろと考えさせてくれること炉がありました。
ぜひ、読んでいただければと思います。
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マーケット・コメント
ドル円についてですが、いつも、話している季節性からすれば、1月か4月に反転することが多いということになるのですが、まだ確認はできませんが、今回は、3月がとりあえずのそこだった可能性があります。
3月21日の週間平均は、年間の平均値からマイナス方向に14.24%も乖離しました。実は、これは、90年以降で、第3番目の乖離率です。最大だったのは、1995年4月の16.6%。第3番目の乖離率です。第2番目は、90年の14.3%ですから、ほぼ同率で2位ということになります。99年も14.0%の乖離率を示現しています。
そして、その4回とも、その後、年間の平均値まで戻っています。今回もそうだとすると、現状では、113~114円、もちろん、平均値は下落し続けますから、しかし、それでも、112円近辺までの戻りはある可能性があります。






