06月26日
板垣哲史
我々人間は幸か不幸か常に先を考え、未来に備えようとして行動するため、ことが起こる前に、前もって事態を予測し、先んじて行動を取ろうとする。
相場の世界でやっかいなのは、プレイヤーが全てこのような発想を持つ人間であることだ。相場のパラドックスとは、売るべき事実が明らかになった時には、売り手がおらず買い手ばかりとなり、買うべき事実が明らかになった時には、買い手がおらず売り手ばかりとなり、その結果相場は動くべき方向と反対の動きになってしまう現象のことを言う。
相場の格言の中にある「噂で買って事実で売る。」「噂で売って事実で買う。」という行動が、時としてプレーヤーの常套手段となる。
とうもろこしの相場で言えば収穫のはるか前に米国中西部での洪水のニュースに反応してその年の秋の収穫期の先物相場に影響を与え始めるわけだ。 すなわち、為替相場に影響を与える重要な経済指標が発表されるその四、五日前から予想に対する思惑の売り買いが始まるが、毎回その情報の伝達スピードが多様な為、毎回微妙にパターンが異なるという難しさがある。
最近では、売買行為に強く影響を与える経済情報は毎月初の金曜日に発表される雇用統計である。通常は、この指標の発表の週初の月曜日からその数値に対する動きが起きる。前週までに主要なアナリストの予測の数値に従って悪い数字の予測ならドル売りポジションを徐々に積みあげ始める。更に水曜日頃になると、例えば、予想よりも更に悪い数字でないかとうわさが流れはじめ、更にドル売りを積み上げようと動き、ドルは益々ドル安となっていく。しかし、前日の木曜日のN.Y.開始時間頃、ドル売りのポジションで満を持していた多くのトレーダーの中から気の弱いトレーダーが、下げすぎたことから不安を感じ初め、ドルの買い戻しのための買いを入れていくために、金曜日の発表直前には月曜日の始値に比べて、水曜日の週最低値から三分の一以上戻してしまう傾向にある。そして、いよいよ発表の時間となる。予想より悪い数字が出た途端、市場は55~65ポイント一瞬下がるが、30数秒から2-3分でなんとショートカバーのためのドル買いが入り、月曜日の始値近くまでドルは戻してしまう。このケースは一つの例で、毎回パターンが異なる。最近は、雇用統計の数値が悪いのを前提にして、予想より少しでも良いか悪いか、地合いがドル安基調での反応だけに複雑である。先6月6日の時は、予想より極端に悪かった為に谷底に落ちたまんまになった稀な動きだった。そして売り持ちのまま週末を越えたために、翌月曜日はショートカバーの買い手が優勢となって、ジリジリとドルは戻してしまった。さらにポールソン財務長官の為替発言でドル高が進行してしまった。
すなわちトレーディングの難しさは、情報を正しく読み取ることにあらず、市場の参加者たちが、どのぐらい前もって行動を起こし、市場参加者が売り持ちのままか買い持ちのままかを推理することによって、勝敗が決することである。しかも指標発表までの思惑の動きは、毎回微妙に異なる流れを持ち、柳の下にドジョウは中々いないのだ。






