外国為替市場では7月の決算期が近づくにつれて米企業業績不安を背景とした米株安が進み、またECBによる利上げ観測からユーロ高・ドル安となっていた。ところが、3日の理事会で実際に0.25%の利上げが決定されたものの、会見でトリシェ総裁が追加利上げを示唆する発言をしなかったことからその調整局面を迎えている。さらに、7日から開催される主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で原油高や世界経済におけるスタグフレーション化の懸念に対する国際協調による有効な政策が打ち出されるとの見方も、ドル買い戻しと原油を中心とするコモディティの手仕舞い売りを促しているようだ。もっとも、足元では日本経済も景気後退観測が高まるなどドル、ユーロ、円いずれも積極的に買える状況ではなく、総じて見送り気分が強まっている。強いていえば、コモディティで手仕舞い売りが出るまでは円の地合いが弱かったが、これはボラティリティが小さな状況では金利差に着目した円キャリー取引が活発になりやすいことを物語っている。
ただ、米国では金融危機が小康状態にあるとはいえ、住宅価格が下げ止まらずにむしろ下げの勢いがさらに加速しており、商業用不動産価格も本格的に下げてきているので金融機関の不良債権が一段と著しく増加しているはずであることを考えると、とても危機が終息したとはいえない。危機がいったん遠のいているのは時価会計の適用を事実上緩和していることで、本来減損処理しなければいけないものをしていないことから、貸倒引当金を積み増すことで資本不足に陥らずに済んでいるからである。しかし、こうした意図的に実勢を隠蔽することで危機を先送りした状態が長続きするとは思えない。
しかも、実体経済も足元ではリセッションに陥らずに済んでいるが、減税効果が切れる7-9月期の半ば以降になると、ガソリン価格がさらに高騰することで個人消費は正念場を迎えることになりそうだ。設備投資についても、企業業績の低迷から経営者の投資マインドが萎縮しており、商業用不動産価格が下落していることから建設投資も落ち込む公算が高いことを考えると、前期よりさらに悪化することが見込まれる。足元で株価が“底無し沼”のように下げているのは、こうした景気の底割れや金融危機の再燃を先取りしている可能性があるのではないか。
ドル・円相場は米国の金融危機が極限に高まった3月17日に1ドル=95円77銭まで下げた後、危機が小康状態となったことから6月16日には108円58銭まで戻した。その後米株安とともに105円台に下押したが、短期的にはその高値を超えて一段高になるかが焦点になる。とはいえ、こうしたことを考えると6月16日の高値を超えても、07年6月22日の高値124円14銭と08年3月17日の安値の半値戻しである109円95銭まで戻すのが精一杯だろう。じきに原油高や食糧危機、スタグフレーションの懸念に対して有効な国際協調政策を打ち出すことができないことが明らかになるにつれてドル相場は反落しやすくなってくると思われる。10月に7-9月期決算が発表されるのを控えて9月ごろから目立ってドル安が進みやすくなり、10~11月には金融危機が再燃することで本格的に下げていく公算が高いのではないか。
おそらく、その際には3月17日の安値で下げ止まることはなく、90円前後が下値目標として意識されるのではないか。それをも下回ると、95年4月19日の79円75銭の史上最安値が視野に入っておかしくないだろう。(7月7日、談)






