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米国の圧力も為替相場を決める

07月24日
板垣哲史

 変動相場制移行当時は、それぞれの国の事情で参加者が限定されて、しかもそれぞれの国家が、自らの政策の一環として最大のプレーヤーでもあった。こうした事実は、今はやや陰に隠れているが、プレーヤーにとって決して忘れてはならない為替相場の特徴でもある。すなわち今でも各国の金融当局は、自らの国益を利するか否かの視点で為替相場の成り行きを注意深く見守り、状況によっては為替介入によって、突然市場に姿を現すことがあるのだ。
 一般に、為替相場の均衡点は、次の経済的ファクターから強い影響を受ける。第一は、GDPに表される、過去数四半期のその国の経済成長率の傾向と半期先までの経済成長率の見通しであるが、高ければその国の通貨は強くなる。第二番目は、同じく半年前ぐらいからのその国の物価の動向と半年先までのインフレ率の想定数値であり、インフレ率が高ければ、その国の通貨の購買力が下がることになり、相対的に通貨の価値は低くなり、弱くなり、その反対であれば強くなる。第三番目は、その国の金利水準が他国と比べて高いレベルなのか低いレベルなのかと先行きの金利がさらに上がりそうなのか、下がりそうなのかを市場が判断することが、本質的に為替の動向を決定付ける。

 通常、投資資金は、公的な年金資金や保険金の運用など、長期運用を目的とした実態のあるものと、ヘッジファンドのように信用創造によるレバレッジを効かして、世界をさまようホットマネーのように短期で移動するものがある。そのために短期で動く借り入れ資金で巨額に膨れ上がった投機資金は、しばしば市場をかく乱する要因としてもっとも注意せねばならない。昨年まで極めて盛んだった円キャリー取引は、その典型的なものだが、サブプライム問題の影響で、信用収縮が世界的に起こり、日本円の買戻しが広範囲に起こり、1ドル95円75銭まで円高が進んだことは記憶に新しい。
 さてこれらの三つのファクターから相場の推移を想定するに当たって、入手しなければならないのは、二国間で毎月発表される各種の経済指標である。米国の発表される経済指標の中で最も相場に影響を与えるのが米国の雇用統計である。その他、四半期ごとのGDP、月次発表の卸売物価、消費者物価、金利を決めるFOMCの会議結果、最近では住宅着工数である。なぜか日本の経済統計の発表の数値はほとんど為替レートに影響を及ぼさない。恐らく、米国ドルが基軸通貨であり、日本は米国の属国に過ぎないと市場が評価しているからであろうか。
 こうした事実を鑑みると最近のポールソン米財務長官の為替介入もありうるとの発言やバーナンキ議長の為替レートの動きに対するコメントは、為替レートの本質は経済学的な理由に留まらず、極めて政治的な側面が根底を支えている事実を思い起こさせるものである。最後に米国当局が介入したのは1995年、1ドル80円切れまで行った時であるが米国の介入額は65億ドルに及んだ。米国財務省は、介入準備金として円資金だけでも170億ドル相当持っているといわれる。
 いまだ世界最強の軍事大国であり、世界最大の経済大国である米国国家の為政者が、国益を考えたときに、不況下のインフレを最小限に抑えるため、今、明らかにドル高を望んでいると思われる。経済指標だけで為替レートが決まると高をくくっていると、痛い目に遭い続けることにもなりかねない。

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2008年07月24日 19:30に投稿されたエントリーのページです。

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