人気ブログ「相場署名人コラム」で相場分析を執筆いただいている板垣哲史氏(株式会社トーマスモアコンサルティング代表取締役)、 林康史氏(立正大学経済学部教授)、マーフィー氏(アジア系銀東京支店の資金・債権・為替の統括)、永山卓矢氏(投資日報社専属記者)の皆様を潘福平(くにやす・FX 株式会社代表取締役社長)が目黒の中国料理「唐園」にお招きして「新春 著名人放談」を繰り広げました。
 今回は四回連続シリースの第二回をお届けします。


★新春「著名人座談」第二回★

情報と情報交換 ☆

 為替ディーラーの世界に話が戻りますが、板垣さんは為替取引をしているとすべてマクロで見るような“癖”がついているので仕事が回ってきてしまい、与えられた仕事をこなしていってしまうのでさらに仕事が回ってくるのではないかと言われていました。そうしたことは為替ディーラーの特徴なのでしょうか、それともそうではないのでしょうか。

板垣 為替ディーラーに関して一般的にいえば、銀行出身者は比較的そうした傾向があるようです。良いことであるかどうかは結果にもよるので一概にはいえませんが、銀行というのは別に自分が儲けているのではなく、顧客に儲けさせてその分け前から一部分をいただいているような業務をしていますから、銀行業務をうまく機能させるには経済動向や景気情勢により戦略を変えていくものです。私は自分が銀行員をしていた頃にはそうした意識がなかったのですが、現在、中小企業の経営コンサルタントのような仕事をしていると、そうしたことを思うようになっています。中小企業で働いている人たちの中には、一般的にある商品を売っているとその商品にしか関心が向かないという人もいるようです。朝からスポーツ新聞しか読んでいなくても、よく会社員をしていられるといった印象を受けてしまうのですが、それも私が銀行員出身であるからそのように思ってしまうのでしょう。

 ただ、私はこの業界に移る前に大手メーカーにいましたが、スポーツ新聞だけ読んでいてもやっていけるものです――というより、その方がいいかもしれません。はっきりいって、自分が担当している商品が売れるかどうかといったことだけしか関心がないので、日経新聞を読んでいても意味がないところがあり、スポーツ新聞だけを読んでいても同じだということになります。

永山 相場だけやっているなら新聞はあまり読まない方がいいかもしれません。私はいろいろ書かなければなりませんから、そこでは材料をつけたりするなどして説明をする必要があるので、日経新聞やその他のビジネス書、歴史書その他の書物を読んでおり、またいろいろと政治的な関わりや市場取引の裏側についての取材もしています。しかし、純粋に相場だけをやるのであれば、本当に必要な情報を入手してしまえば、それ以上のことまでやる必要はないのでしょう。

 実際、あまり関係のない情報に影響されると好ましくない結果をもたらすこともあるので、それほど多くの情報を入手しない方がいい場合もあるかと思います。

板垣 ですからあまり多くのものを読まない方がいい場合もありますし、仲間同士の会話でも同じことです。

 そうしたことはより大規模な観点で考えてもいえることです。マーケットで上がりそうだといった雰囲気が強まってしまうと、多くの参加者がそうした雰囲気に影響されてしまって合理的な判断が出来なくなってしまい、とにかく上がりそうだといった見方に集約される傾向があります。ところが、実際には“絶対”などということはあり得ず、下がることもあります。

 どのように他人から影響を受けるかですが、実際に取引に参加している人の多くは、意見を聞きたい人と聞きたくない人がいるものです。

マーフィー 極端にいえば、8割当たる人はそんなにいないようです8割外す人は大勢います。ということは、8割外す人は大勢いるのですから、見つかるはずであり、その人たちの相場観と反対の取引をすれば8割当たるはずだということになります。もちろん、それでも2割の確率で外れることになりますが、それほど少ない確率がいつまでも続くはずがないので、確率的にはかなりのパ方マンスを得られるはずです。

 よく大衆は外れるといいますが、大多数の人たちが外れるものです。本当にかなりのパ方マンスを獲得している人はごく少ないものです。

 つまり、多くの情報が買いのシグナルで、マーケットの雰囲気がかなり買い気の強い状態であれば、反対の投資行動をとれば良いということでしょうか。

 そんな簡単なら苦労はしません。私は先輩に「一番列車には乗れなくてもいいが、二番列車に乗れ。そして、最後まで乗てるな」と教わりました。

板垣 しかし、潘さんのいうように、実際にはそうした行動ができる勇気がなかなか沸いて来ないものです。全員が上がるから買うべきだと言っているのに、自分だけそれと反対に売り上がっていくといった姿勢をとるのは、頭でそう思ってもなかなかできないものです。

マーフィー さらにいえば、自分の相場観と実際にもつポジションは異なることもあります。例えば、ある人が「上がる」とあるマスコミ誌上で述べており、1ヵ月経って相応に上昇したので、その人に「儲かったでしょう」と聞いてみると、実際にはそれほど儲かっていないことが多いものです。例えば、5円上がったのでかなり儲かっていたのではないかと思われていたのが、実際にはその人は1円上がった時点ですぐに利食ってしまっていたのであまり儲かっていなかった、といったことをよく聞きます(笑)。さらには、そこから逆張りで対処してしまい、結局2円儲かって3円損してトータルで1円もの損失だったといったことはよくあることです(笑)。

 それは人間の心理的な観点から十分納得できます。長期的には上がると思っており、実際にその通りに相場が動いているとその人は有頂天になっていますから、修正局面となるのを見込んで1円もの下げを取りにいこうとして売ると、5円上がってしまったといったことがよくあります。私自身もそういう罠にはまることもあります。人間の心理的な問題なのでどうしようもないのですが、相場が当たっていて注意力が散漫になっている時は非常に怖い。
 

マーフィー いわば人間が本来もっている“煩悩”とでもいうべきものですからどうしようもありません。ですから、今日、私がレポートで書いたように、はっきり言えば、相場観といったものは二の次なのです。毎月1回書かせていただいていますが、そこでは相場観を書いても仕方がないと思っています。私としては、それを読んでいる人が儲かるようになって欲しいわけです。儲かるように指南をさせていただくことが、このレポートを執筆するうえで“使命”だと思っています。具体的に言えば、自分の取引システムを形成することが大事なのであり、それはその人独自のものであって、他人であるAさんでもBさんでもないのです。各人の相場観が違っていてもかまわないのであり、必要以上に影響を受けてはいけないのです。


 テクニカルの有効性

板垣 林さんに質問したいことがあります。今から20年前の為替市場にはメイン・プレイヤーが存在せず、流動性も不足気味でしたから右往左往していたものです。ところが、今ではかなり参加者が多くなり、おそらく、証拠金取引だけでも1000億円を超えていると思われ、20倍ものレバレッジをかけただけでも2兆円ほどのマーケットになっています。そこでテクニカル・アナリストとしての立場からお聞きしたいのですが、今では参加者が少なかった以前と比べてテクニカル分析に従った投資判断は増しているのでしょうか。また、それによる判断が望ましい結果をもたらすようになっているのでしょうか。

 それはテクニカルをどのように位置づけるかにもよってくるでしょう。なぜなら、テクニカル分析そのものが各人によって異なるからです。いうまでもなくテクニカル分析をしっかり勉強した人もいますが、それはごく少数でしかなく、はっきり言ってどうでもいいようなことをテクニカル分析だと称している人がほとんどです。例えば、自分は○×法の第一人者だと自称してるのに、ほとんど素人に毛のはえた程度の人がいます(笑)。スカートの丈の長さが短くなると景気が良くなる傾向があり、そうしたこともテクニカル分析だと主張している人もいましたね。
 そこでまずテクニカル分析とはどのようなものかを定義する必要があるでしょう。どのように定義するのかというと、価格と値段を調べて将来の価格と値段を当てるものということができるでしょう。では、それが当たるか当たらないかというと、おそらく、マーケットが効率的であればあるほど当たらなくなってくるはずです。参加者がそれを投資判断の材料にしていく過程では当たるのですが、理論的にいえば、全員がそのような行動をとれば織り込まれてしまい、当たらなくなってくるはずです。ただし、これはすべての参加者がまったく正確なテクニカル分析をするようになれば確かにそうなるはずですが、実際にはそうしたことはあり得ません。実際のところ、今、言いましたようにテクニカル分析をしている人たちの99%は正確な分析をしているわけではないのですから、分析自体は今でも、また今後も有用な判断材料といえるはずです。テクニカル分析をしていると称している人たちの多くはその本質を理解せずに信奉しているだけなのですから、そうした人たちについてはたまたま当たる時もあれば、外れる時もあります。しかし、外れたからといって、テクニカル分析が有用性がないとはいえないわけです。
 私は、テクニカル分析はますます当たるようになっていると思っています。テクニカル分析というのはトレンドを当てるものと、保合いの中で用いるものに大別できますが、特に後者の方が、的中率が高いものです。98年に外為法が改正されて以来、為替相場は保合いでの動きが続くようになっているので、テクニカル分析は当たる確率が高くなっているといえるでしょう。そうしたマーケット環境では、下がったら買うわけですが、もっと下がってしまったら放っておくか、あるいはさらに買い増すしかないことになります。こうした投資行動は明らかに“一方通行”的なものですが、そうした投資姿勢がますます機能するようになってきていると考えています。

板垣 機能するということは、自分が取引に参加する手段としてテクニカル分析を用いる場合、どの程度の正確性があるのでしょうか。例えば今日、ドル・円相場はさらに円安・ドル高に振れて1年1ヵ月ぶりに05年12月の高値を超えてきましたが、今回の局面でどこまで上昇していくかを算出するうえで、どれほどの誤差を見込んで推測すべきなのでしょうか。

 エリオット波動では個別銘柄の株価を対象としたものならもっと正確に当たるとされていますが、為替相場では1円程度は誤差の範囲内と考えています。

どの市場のデータを使うか。終値の意味

板垣 テクニカル分析で最も一般的な指標とされる移動平均というのは、毎日終値で売った人と買った人の値段は平均値で等しくなる値のことです。ですから、売っていた人は実際の相場がその平均値までくるとそこで買い戻せば、手数料や税金を除けば損益がまったく発生しないことになり、損切って買い戻すかどうかの大きな目安になります。ただし、実際には参加者すべてが終値で取引をしているわけではなく、相場は日中も動いているのですから正確性には欠くかもしれませんが、心理的には大きな意味があるとされています。ただ、物理的にはどうして重要な意味があるとされているのでしょうか。

 それは終値がどのような意味をもっているかということにもよるでしょう。終値とは、始値や高値、安値とは異なる意味があります。終値が異なるというのは、市場全体がこの値で落ち着かせようという“総意”といえるからです。高値はこの水準が高すぎると思って売った人は結局儲かっているのであり、安値についても安すぎると思って買った人が利益を得ています。これに対し、終値はその日の1日の動きの中で、マーケットが参加者全員のコンセンサスとして容認した値であるという点で他の三者とは明らかに異なるといえます。そうした意味では、その1日の動きの“擬似平均値”といえるでしょう。
 

マーフィー 通常、分析をする上でベースとなるのはあくまでも終値です。私も今日、書いたレポートでは終値で統一していますが、それは終値で分析することに意味があるからです。

板垣 そこで、地球上のどこかで24時間取引が行われているマーケットにおいて、私たちのように日本で取引をしている投資家は何時の時点で終値と見なせばいいのでしょうか。

マーフィー ドル・円相場については東京時間の午後5時が最も適切であるという結論を得ました。もちろん、特にあまり深く考えなくても一般的には午後5時を終値としているものですが、実際に検証してもそうした答えを導くことができたのです。

 24時間の中で、東京、ロンドン、ニューヨークと各市場で取引が行われていますが、ニューヨークの午後5時はその3市場がどこも開いていない空白の時間帯なのですから、その時間をもって終値とするのが望ましいと思います。

マーフィー 24時間であれば、ニューヨーク市場での午後5時をもってその日の市場の終値とするのが最もコンセンサスを得やすいでしょう。日本時間でいえば、夏時間なら午前6時、冬時間なら7時です。

 私は二つの終値を見ています。ロンドン市場に参加している人たちが取引できる時間――ポンド・ドル相場になります――とニューヨークの終値です。ポンド・ドル相場を取引していて一番妙味があるのは、ニューヨーク市場がクローズしてウェリントン市場がオープンする間の時間帯です。つまり、ニューヨークの終値のころです。
 以前、『相場としての外国為替』という本に書いたことがありますが、昔、毎週水曜日にニューヨーク市場がクローズする間際に買い注文を並べたものです。木曜日の朝5時から6時ごろに起床して、その時に相場が動いていなければ買い注文を用意し、出来たら教えてくれるように頼んでおく。そうするとニューヨークから出来たことを知らせる電話が来ると、シドニーに電話をして、同じレートで売り注文を出します。その間、わずかに30分間です。そうした取引をすることで、金利スワップ取引ができたわけです。損失を出すこともありましたが、2回勝って1回負けるという確率でしたから儲けることができました。もっとも、そうした取引は企業に所属していたからこそできたことです。

マーフィー  ただ、今では手数料がかなり下がっているので、一般投資家の皆さんもそうした取引ができるようになっています。これは実に凄いことだと思います

平成19年1月18日

中国料理 唐 園 (目黒)にて

    ~第三回へ続く~                                               

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