人気ブログ「相場署名人コラム」で相場分析を執筆いただいている板垣哲史氏(株式会社トーマスモアコンサルティング代表取締役)、 林康史氏(立正大学経済学部教授)、マーフィー氏(アジア系銀東京支店の資金・債権・為替の統括)、永山卓矢氏(投資日報社専属記者)の皆様を潘福平(くにやす・FX 株式会社代表取締役社長)が目黒の中国料理「唐園」にお招きして「新春 著名人放談」を繰り広げました。
 今回は四回連続シリースの第三回をお届けします。


★新春「著名人座談」第三回★

☆相場観について☆

 ところで、2007年の相場をどのように見ていますか。

マーフィー ホームページをご覧下さい(笑)。基本的に私が言いたいことは、相場は予想しては駄目だということであり、それが私の“哲学”です。相場を予想しようとするから、自分のポジションがつかまってしまうのです。ですから、相場を予想するのではなく、このような状況になったらどうすればいいか、また別の状況になったらどうするのかということを考えるべきです。

 ただ、それはここでの議論とは別の話でしょう。予想した上で、それが外れるなどした場合に、どうすればいいかといったことで考えるべきなのではないですか。

マーフィー いえ、そもそも予想などというものは、誰でもドル高になるといえるし、ドル安になるとも言えるものです。百人いれば百人分もの意見があるのであり、それを聞いたところで「そうなのか」と思うだけです。ですから、相場を予想することはまったく意味がないと考えていますし、こうした議論をすること自体、意味がありません。

板垣 それは一面では真理であるかもしれませんが、あまりに極端な議論でしょう。今、2007年の予想を聞かれているのですから。第一、そうした議論がまかり通ってしまえば、私の懐に原稿料が入らなくなっちゃう(笑)。

マーフィー 申し訳ないですが、相場を語ることは意味がありません。これは私の哲学なのですから、それを曲げることはできません。

 私はそうは思いません。以前にもお話したことがありますが、プロとアマの違いは野球に例えられます。同じ外野手でも、プロの選手は打者や投手、捕手により、またその局面においてもどこの塁に走者がいて、そしてこの投手の球種といったものもインプットした上で、打者が打つとどのあたりに打球が飛んでくるかをあらかじめ予想しているものです。もちろん、その予想が当たるかどうかはわかりませんが、あくまでも確率的な観点から対処しようとします。これに対し、素人の選手はそうしたことは考えておらず、打者が球を打つと、それに対応して動くだけです。しかし、そうしたプロとアマの違いは、単に守備についている姿だけを見ているだけではわかりません。
 そうしたことはマーケットでも同じことであり、マーフィーさんが言われていることもわかりますが、プロの投資家はある程度予想をしても、外れたらどうするかといったことも考えているわけです。実は、一昨年7月21日に中国の通貨当局が人民元の変動幅を拡大しましたが、その時、私はたまたま講演会で講演をしていたものです。その時、司会者が「人民元が制度変更になったことでドル・円相場がかなり動いています」と言われたのですが、それとは異なる講演をしていた私は、もとより制度変更は秋以降だと思っていたので驚いたのですが、制度変更があったのだったら、今日か明日買う、あるいは2円程度下がったら買うと述べたものです。というのは、自分の予想が当たるか外れるかは問題外なのであり、当たった時と外れた時のそれぞれについてどうするかといったシミュレーションはかなり以前から考えているからです。ですから、その時私は、今日は外れましたが、それはそれとして、それに応じた戦略を披露したわけです。実際、マーケットはその通りに動きました。ですから私は、相場を予想することはまったく無駄なことだとは思いません。

マーフィー もし予想が外れた場合にどうするかといったことが多くの人たちにわかっていればいいのですが、それがわかっていない人は予想が外れた専門家の責任を問うことになりかねません。それほど影響力のない人はそうしたことをされる心配があまりないでしょうが、それなら最初から予想などする必要がないのであり、予想をする以上はそれなりに責任が発生するはずです。予想が外れたからそれに応じたシナリオで動くように求めるのは無責任だと思います。ですから、それなら最初から自分の相場観を披露して予想することなどしない方がいいのです。いずれにせよ、投資家の当初の相場観と実際の収益は別問題だということです。

 そこで私が今、1ヵ月に1回書かせていただいている原稿は、読んでいただいている投資家の方々が、1年を終わった時に儲かったという実感が沸くようになっていただきたいという観点で執筆に取り組んでいます。1年が終わった時に自分の相場観が当たったと思うことではないのです。

 潘さんが私に「林さんはよく当たる」と言われます。私自身もそう思っています(笑)が、だとしたら、潘さんが私と付き合うのは相場観が当たっているためだけなのでしょうか。

 それは違います。私は林さんと何回もお話をさせていただきましたが、ホームページ上に例えば著名人のコラムの中で、予想そのものよりも、そうした予想をするに至った過程をご披露いただくことにより、読者の方々に先生方の考え方を取り入れていただくことで、より賢い投資手法を手に入れて頂けるからです。相場が上がるか下がるかということではなく、どの様に考えているかをご披露いただければと願っております。相場が上がると予想していただいた際に、先生方の手法により「なるほど、本当に上がりそうだ」と同感するのであれば、それでかまいません。逆に先生方がいわれているのがおかしいと思うようなら、それはそれで読者の方が勉強している証拠になります。私はこのホームページの読者にはそうしたことを提唱したいと思っております。

マーフィー 上がるか下がるかというのは誰でもできることです。そうではなく、要はこうした理由で上がる、もしくは下がるといった具合に、その理由を少しでも提供させていただくことで、自分の投資手法が徐々に確立されていきます。ちなみに、私は12月にホームページに原稿を書かせていただきましたが、当日には私のモデルでは「売り」だったのが、翌日には「買い」になったものです。もしその時にはっきり「買い」か「売り」かといった断定的な判断をしていれば、その原稿はまったくおかしなものとなっていたはずです。

 私流のやり方

板垣 私の投資手法を一般の投資家にわかりやすく言えば、安いから買う、高いから売るといった基本的な考え方でいえば、何をもって高いか、安いかという基準を自分なりにもつ時には、まず昨年1年間の平均レートをその前提に置きます。ちなみに、ドル・円相場の昨年1年間の平均レートは1ドル=116円30銭です。それはあくまでも昨年の“結果”に過ぎないのですが、それが実際に相場に取り組む上で最も近い年の結果なのですから、その平均レートを基準にして、過去の高値と安値を考慮に入れた上で概ねこの程度動くであろうというコア・レンジを設定することができます――今年のドル円相場でいえば、113円50銭から118円50銭のレンジ内での動きになるという見通しを個人的には設定しています。そうした観点から現在の相場を見ると、足元では121円40銭という水準が個人的に設定したレンジより円安に位置しているので、基本的には売りのタイミングを見計らって取り組んでいこうと思っています。もちろん、さらに円安に向かうリスクが当然あり、それが125円で止まる可能性もあれば、130円まで進むこともあり得るので、それはそれなりに対処しなければなりません。ではどうするかというと、基本的に跳ね上がった時に売りを入れ、後から買うわけです。そして、見通し通りに相場が下がっていき、昨年の平均レートである116円30銭を下回ると、今度は買いのタイミングを狙う姿勢に転換します。もちろん、大きく下がった時にすかさず買いを入れるのは難しいのですが、あくまでも買いを先行させる形で対処していくというシナリオを大まかに設定するわけです。

 ただ、そうした投資行動は板垣さんがプロだからそう思っているだけなのではないでしょうか。それは明らかに行動ファイナンス理論におけるギャンブラーズ・ファラシーです。どういうことかというと、通常、毎日相場を見ていると、上がったら下がる、下がったら上がると思うわけです。ところが、マーケットは実はそのようには動かないこともあり得るのであり、上がったら翌日も上がることもあります。ですから、私は先ほども述べましたが、今の相場の動きが上昇トレンドにあるのか、それとも下降トレンドにあるのかをまず考えて、上昇トレンドであれば買いからしか入らないというのを原則としています。
 

板垣 言い忘れたことがあります。何も私はコア・レンジを基本として考えるとは言いましたが、それに固執しているわけではありません。昨年1年間はあまり大きな動きがありませんでしたが、どちらかといえば円安・ドル高に動いたといえるでしょう。そうした中で、トレンドとしてどちらをとっていくかを見る時に、昨年と今年を比べてどのような経済環境や日米関係その他の重要なファクターが出てくるかというと、より円安に向かうというものを重視するのか、円高に転換するファクターを採り入れるのかということをまず大前提に考えます。そうした観点で考えると、足元の相場水準は単純に昨年のコア・レンジより円安・ドル高に振れているということだけでなく、より重要なファンダメンタルズ的なファクターで考えてもそのように考えております。もちろん、これからの動きや環境の変化によりそれを修正しなければならなくなることもあり得るのですが、現時点では売りから入るのを前提に考えています。 

林 板垣さんは自分が想定したレンジより高いから売るという手法ですが、私ならそれだからこそ様子を見るしかないと考えます。なぜなら、確かに1月に想定していたレンジより上振れているのですが、既にドル買いポジションをとっているので、それをそのまま持っていた方が望ましいからです。これから考えることは、さらに買い増すか、利食うか、見送るかということになりますが、とりあえず少し様子を見ようかと思っております。

顧客(読者)のやり方とコメント

マーフィー ところで、せっかく皆さんにお集まりいただいたのであえてお尋ねしたいことがあります。ご自分のポジションと3円や5円程度反対方向に相場が向かっても問題なく、買い下がったり売り上がったりすることができる投資家の方々が多いのでしょうか。もしくは、1ドル=121円で買ったら120円70銭に下がっただけで苦しくなってしまい、どうすればいいのか右往左往してしまう投資家とでは対処方針が異なります。私が原稿を書かせていただいているにあたり、くにやす・FXさんのお客様にはどのような投資家層が多いのかにより異なるものになります。リスクをどれだけとれるかにより、投資手法もまったく異なるものになります。もちろん、長期的な視点で投資をしているのか、日計りで取引をしているかにより、対処の仕方が大きく異なるものになるのはいうまでもありません。日足で取引をする人もいれば、週足や、かなり長期的な視点で取引をするのであれば月足を重視しているかもしれません。あるいは日計り商いなら、時間足や分足を見ていることでしょう。ただ個人的には、かなり短期間でどのように動くかといったことに関心がある人たちが圧倒的に多いと思っています。そうした観点で、毎月原稿を書かせていただいています。

 弊社のお客様には、数日間や数時間程度しかポジションをもっていない人もいれば、相場が逆方向に向かって含み損となっているポジションを手仕舞わないでかなり長期にわたり持ち続ける人もおられます。

マーフィー もしポジションをとったら逆に相場が向かってしまい、それをいつまでももち続けているお客様がおられるようであれば、くにやす・FXさんには収益になりません。私はそうした視点で原稿を書かせていただいております。私は社長に高収益を上げていただきたいのと同時に、お客様それぞれにも儲けていただきたいと望んでおり、それに貢献したいと思っております。板垣さんのように売り上がることができるのであればある程度リスクをとった投資姿勢をとることもできますが、そうでないお客様を対象にしているのであれば、そうした視線で原稿を書いてもあまり意味がないでしょう。

板垣 私はそうしたことはまったく考えていません。自分の言いたいことだけを書いています。マーフィーさんは上がるか下がるかといった相場観を書くのは無意味だと言われましたが、まったくのナンセンスであり、そうした意見には納得できません。やはり自分の相場観を披露するのは大いに意味があることだと思っています。それを読み手の投資家の皆さんが参考にすればいいのであり、強気派をとるのか、弱気派をとるのかは投資家の皆様方が自己責任で判断すべきことであるはずです。
 ただ、マーフィーさんはどのような人が読まれるかを考えて原稿を書いておられるようなので、好かれているでしょう。林さんは今、入手している情報を基に、ご自分が考えていることを著しておられるようです。それを受け取った人が、その中にはかなり経験のある人もいれば初めて取引をする人もいるでしょうし、お金持ちもいれば金銭的にあまり余裕がない人もいることでしょう。いろいろなお客様がいるでしょうが、各人がそれなりの立場で受け取って読んでおられるでしょう。私はそうしたことはまったく考えず、今思っていることを勝手に書かせていただいております。ただひとつ言わせていただきたいのですが、マーフィーさんは読み手のお客様のことを考えて書いておられるのは大変結構なのですが、ご自分で責任をとっているわけではないということです。

平成19年1月18日

中国料理 唐 園 (目黒)にて

    ~第四回(最終回)へ続く~                                               

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